□昼下がりの保健室で
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保健室で何時もの通り寝てた。
お気に入りの窓側のベット。もう自分専用の枕も置いてある位お気に入り。
保健医のおばちゃんに一言云って布団にもぐりこむ。
太陽の匂いがする。ああ、温かい。ちょっと寝たら放課後だ。うん、少しだけ寝よう。
そんな事を思いながら達海は意識を手放す。
──起きたら一悶着起きるって事は、勿論この時点で夢にも思ってなかった訳である。





英語教師の憂鬱





騒がしい。
確かに、騒がしい。
ん、と声を漏らし達海は次第に意識が覚醒していく。
耳に入ってくるのは誰かの声。五月蠅いなぁ、まったく。
達海は瞳も明けるのも億劫だったが、もしかしたら何時ものように誰かが呼びに来たのかもしれない。
監督、練習始まりますよ、と。
基本的に村越だの椿だの世良だの、夏木やらなんやらが起しに来る。
村越以外はどうせジャンケンで負けたとかそんなもんだろ。


「ん…」


ふと、身じろぐと、何か暖かいものに触れる。
お? 何だ?
覚醒しきっていない頭で考えてみても無論答えなど出る訳ではない。
しょうがないなぁと達海は重い瞼を開けた。



「………へ?」



たっぷり30秒後。達海はそれだけ呟いた。
あー睫毛長いねやっぱりなんて流暢に何故自分は考えたんだろうか。




「なん、で」



学園の王子と自他共に認められているジーノが、何故自分の隣で寝ているのだろうか。
あまりの驚きに身体が動かない。こんな事は久々だ。
随分バランスの取れた綺麗な顔だ。ああちくしょうなんだこれ?
達海は夢か現実かある意味で何の区別もつなかった。
ただ区別がついたのは、叫んだのはきっとそこで茫然と突っ立ている椿ではなく、おろおろとしている夏木だろうな、とぼんやり思った。



ああ今、何時だろうか。
達海はこれが現実だと分かると無意識に現実逃避を始めた。










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