*GIFT*

□夏の日
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「リン!」


一番聞きたかった声が聞こえた。

リンはばっと顔を上げた。


「レン!」


傘を持ってレンが走り寄ってくる。


「リン!心配しただろ!何でこんなところにいるんだよ!」


ちょっと怒ったようなレンの声。

でも、レンが来てくれた。
それだけでひどく嬉しかったからレンに抱きついて


「ごめんね、レン」


と言った。


「まぁ、リンが無事ならいいよ。でもさ、何でこんなとこにいたの?」


「あぁ、アイスを探してたら雨が…ってあぁっ!」


リンが叫んだ。


「どうしたんだ、リン?」


レンが尋ねると、泣きそうな顔でリンが答えた。


「アイス買うの忘れた…」


するとレンがリンの目の前に何かを掲げた。


「そんなこったろうと思った…ちゃんと買っといたよ。」


それは、袋に入ったアイスだった。


「ごめんね…結局レンが買っちゃってるし…」


「気にすんなよ。俺はリンと一緒に食べれれば何でもいいんだから。」


優しく微笑むレン。

うん、とリンが頷くと


「じゃあ帰ろうか、リン。」


と言って左手を差し出す。
驚いてレンの顔を見上げる。


「何だよ…嫌ならいいよ…」


ちょっと拗ねたような顔をするレン。


「ま、たまにはいいよね!」


思いっきりレンの手を握りしめた。


「さぁ、帰ろうか。」


顔を見合わせて同時に言った。

ふふっと、リンが笑って
ははっと、レンが笑って

歩き出そうとしたその時、


「うわぁ…」


リンが感嘆の声をあげる。

さっきまでの雨がさっと上がり、代わりに大きな橋が空にかかっていた。


「レン、虹だよ」


「なぁ、きれいだな」


「ねぇ、レン」


「何?」


「私ね、さっきまでレンに怒ってたの。何で私がアイス買いに行かなきゃいけないのよ!って」


「…ごめんな」


「ううん、私が負けたんだもん。八つ当たりよね」


リンがいっそう強くレンの手を握る。


「でも、レンが来てくれてすごく嬉しかったの。レン、ありがとう。それと…」


レンの方へ顔を向けて、レンと目を合わせた。


「大好き!」


いつもは言えない、本当の言葉。


「俺も!」


レンもニッと笑い手を握り返した。


そして…行きは一人で来た道を二人で歩いて帰っていった。
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