*曲小説*
□置き去り月夜抄
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置き去り月夜抄
「母さん!」
この道はどんな幸せに続いてるの?
…なんてね。
そんなこと聞けないわ…
目の前で母さんが緑の髪をバサッと揺らして振り返った。
「…何?」
まるで死人のようだ。
目には活気がなく、虚ろに視点がさ迷う。
「…ううん!リンと手繋ごっ!」
私はリン。あなたはわたしを知っているんじゃない?
そうね、「果実」って言ったら分かってくれる?
フフフッ…
「ね、母さん。これから行く場所では大好きなおやつをたくさん食べられるのかな?
リン、楽しみぃ!」
わざと明るく振る舞う。
だって今日のことを「私たち」は知るはずがないんだから…
するとリンの横で、リンによく似た男の子が、自分の右手を握る男に声をかけた。