*曲小説*
□moonlit bear
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「ふぅっ、遠くまで来ちゃったわ…」
辺りがかなり暗くなった頃、一人の女が森の中で呟いた。
彼女の名前はイヴ・ムーンリット。
友達にはミクという愛称で親しまれていた。
「さて、帰らなきゃ……あらっ?」
さぁ帰ろうというところで、イヴはあるものを見つけた。
それは、月の光に照らされて輝く二つの赤い果実だった。
それを見たイヴの脳裏に、微かに悲しい影がよぎった。
「これはキット神様からのプレゼントね」
だとしたら何て素敵なプレゼントなんだろう。
持って帰れば、彼は喜ぶかしら…?
ううん。喜ぶなんてもんじゃないわ。
嬉しすぎて泣いちゃうかもね!
イヴは笑顔で、果実を両腕に抱え込んだ。
今日は月がとてもきれいね…
<月がきれいに見えるってことは、それだけ夜が暗いってことだ>
イヴの頭に誰かの言葉が思い浮かんだ。
背筋がゾクッとした。
…嫌だわ、早くお家へ帰ろ
フルフルと頭を振って気を取り直したイヴの視界に、森の中から確かに月の光が見えた。
こんな暗い夜には コワイ熊が出るから…