*曲小説*
□悪ノ娘 悪ノ召使
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「リン、こっちにきてごらん!」
まだつたない言葉を愛らしい唇で紡ぎ出す少年。
「なぁに?レン」
そして、その少年と瓜二つの可愛らしい少女。
二人は町外れの小さな港にいました。
レンと呼ばれた少年は、走りよってくるリンと呼ばれた少女の左手をしっかりと握りしめて、そして、海辺に向かって歩みを進めました。
「レン?何をするの?」
「ふふっ、あのね、おまじないをするんだ。」
レンが得意気に答えます。
「おまじない?」
リンが首を傾げると
「そうさ!この海に昔からあるんだ!…いいかい、リン…」
レンがリンに説明を始めたようです。
リンの瞳が段々と輝きを増していきます。
そして、レンが話終えると
「すっごーい!」
と叫ぶが早く、一目散に砂浜まで駆けていきました。
「…!待ってよ、リン!」
レンも駆け出そうとします。
…しかし
その細い腕を、力強く握りしめた者がありました。
「…?ガクポルド大臣、放して?」
それは紫の長髪を持った大臣でした。
「レン様…いや、レンリィ・ド・アクチュール。今日からお前はレンレイ・イエロナルだ。いいな?」
そう言って、レンをどこかへと連れていきました。
それからレン、いや、黄ノ国第一王子、レンリィ・ド・アクチュールの姿を見たものはいないそうです。
しかし、レンリィ王子は最後にこんなものを残していました。
それは…
『リンが、世界で一番幸せになれますように。』
と書いてある羊皮紙と、ガラスの小瓶でした。
それは今でも失われてはいません。
一人の老婦人が、生涯大事に持っていたそうです。
最期の、最期の時まで…