お題

□clown(道化師)
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あなたのお陰で勇気が湧いたの。
ありがとう、私の大事なピエロさん…




clown





真っ白な壁、真っ白な天井、常に鼻を突く消毒液の匂い。
それが私の全てだった。

二年前から急に体が弱くなり、それからずっとここに居る。


親友なんて言える人なんか居なくて、友達も全然居ない。

毎日一番話すのは…



コンコンッ、と扉を叩く音と、失礼しまぁす、という愛らしい声。



「リンちゃん、検温やるよぉ!」



亜麻色の綺麗な髪を揺らして、ナースのLilyちゃんが入ってきた。

この娘が私の友人。
ナースさんしか友達が出来ない私。
Lilyちゃんは大好きだけどね…
でも、ナースさんだから、親友とは呼べないと思う。


そんな私…鏡音リンの考えなんて知らないLilyちゃんが嬉しそうに言う。



「リンちゃん!今日はね、先生も来てくれたよ!」



Lilyちゃんの後から、ひょこっと顔を覗かせるショートヘアーの女の子。
いや、女性か。その人の髪は緑だった。



「はぁーい!リンちゃん!GUMI先生だよぉ!」



とても先生には見えないけど、すごく優秀な先生らしい。
緑というよりも心なしか黄緑に近い髪を輝かせて笑顔を振り撒く。


GUMI先生、可愛いけどそんなに騒いだら…



「GUMI先生。うるさいわよ?」



「めっ、MEIKO先生!」



ほら、やっぱり怒られた。


GUMIの視線の先には、明るい茶髪のグラマーな女性がいた。
20代にして、なんか偉い役所に就いたらしい。
白衣の下に赤い服を着て微笑んでいる。



こんなことが私の日常。
私に関わるのはこの三人。
そして、この病院の医院長であるKAITO先生。
多忙だから夜だけ来てくれる。


何でこんなにもたくさんの先生たちに囲まれているのか。
それは、私の声が出ないから。


私は産まれてすぐに声帯が潰れてしまった。
だから声が出ない。友達も出来ない。




みんな大好きだけど、やっぱり寂しいものは寂しい。

親は仕事仕事って、もう3ヶ月は顔を見ていない。
私が面倒くさくなっただけのくせにね。



体が弱く、声のでない私を気に掛けてくれる唯一の人たち。

この人たちさえいてくれれば、このままでもいいかな…なんてね。
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