short story

□一つの始まり、一つの終わり
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恋愛は自由だ。
例え同性を好きになろうが、人間外を愛そうが、俺はそれをありのままに受け止め、俺の愛を以って観察しよう。
けれど、―――



一目会ったその日から恋の花咲く事もあるとはいうが、一説では一目惚れは自分の中にはない遺伝子を多く持ってる相手を直感的に見抜き、その遺伝子を取り込む為に相手に恋愛感情を抱くと言われてる。
その説を一概に否定も出来ないが…その話が本当なら誰も彼もがシズちゃんに一目惚れをして今頃シズちゃんハーレムが出来上がっていてもおかしくはない筈だし、幼稚園の頃から一目惚れされまくっている俺の遺伝子はどれ程特殊なんだという話だ。
その事からも分かる通り、人間の精神構造とは先程の話の様に単純明快には出来ていない。
もしそこまで人間が単純で打算的だったら人類はもっと劇的に進化している筈だ。なのに歴史を振り返ってみれば百年前も千年前も文明自体は進化してもやってる事は大した進歩はしていない。
…まぁだからこそその愚かさは愛しいと言えなくもないけれど。
俺の顔は良い。頭脳や身体能力、どれを取っても決して自惚れなどではなく雄として上等だ。一目惚れされる事だって少なくない。
けれどその一目惚れは大概の場合において遺伝子云々の話ではなく、“良い男をゲットした”“じゃじゃ馬を手懐けた”という自己顕示欲や自己満足を満たしたいという欲求であり、それらが恋愛感情や性欲よりも優先される人間は結構いるものだ。
タチが悪いのはそういう輩は得てしてそれを一目惚れだ、恋愛感情だと思い込んでいる事なのだが。
まぁそういう場合俺は如才なく懇切丁寧に話してお引取り願うか、何かに利用させて貰うかのどちらかだ。
きっと彼女(たまに彼)らにとっては一目惚れなんかで人を好きになるんじゃないという良い教訓になった事だろう。俺って優しいなぁ。
さて、ここからが本題だ。
今まで一目惚れというものを自らの体験も含めて長々と語ってきた訳だが何が言いたかったというのかというとまぁ、つまり、

――この年にして人生初の一目惚れを体験してしまえるくらいには、俺は自分で思っているよりも人間らしかったみたいだという事だ。



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