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□2007.08まで
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“なんちゃって話”B
ここは東東京地区大会の、とある会場。アルプス席ではジャージ姿とスーツ姿の二人が、揃ってため息をついている。
「今日も、いませんでしたね…」
「そうだな…」
ジョージの方は球団シャークのトレーナー兼マネージャー。スーツの方は、フロント側代表である。
二人揃ってため息をつくのは訳がある。
終盤。
どれだけ打たれても持ちこたえられる投手の獲得。それは球団の、切実な願いだったのだ。
「うちは先発や中継ぎには、いい素質を待った選手がごろごろいるのに、ピンチに強いクローザーがいませんから…」
そのトレーナーの言葉に、傍からはため息が返る。
「終盤、いつもそれで負けてるからなあ」
「そちらも、何とかしようとしているのに空回りですし…」
二人して、大きなため息をつく。
「せめて来期。来期に間に合ういい人材はいないものかとこうして球場回っているが…」
「これぞって人材は、なかなかいませんねえ…」
はー……‥
地面に疲れと諦めが混ざったため息が、重たく落とされる。
直視したくない現実に、一瞬閉じた目蓋が開かれた時、偶然が一つの貼り紙を見つけた。
(墨谷高校対専修館…? 第二会場か。)
「おい、確か墨谷高校はノーシードだったな?」
「? そうですが…?」
「見に行こう」
「ええ?! もう終わってますよ!」
「いいから」
そうしていった球場。
とうに終わっていると思われていた試合はまだ続いていた。
しかも…
「あの専修館相手に、一点差?!」
場面は、2回。
慌ててスコアボードを見ると、1死。
そこに
「持ちこたえましたよ! あのエラーの後で!!」
「なんて奴だ…」
…彼が、いた。
(続?)