★中・短編★
□唯我独尊男の我儘
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きっちり練習球数投げると、タカオはマウンドを降りて、グラブとスパイクと引き替えに自分の靴と履き変えた。
「納得したか?」
「はい」
「じゃあ、俺は帰るよ。長居するつもりないし」
「そこまで送り…」
「いいって。じゃあ練習、頑張れよ!」
「はいっ」
見送る背が、夕日の中に消えていく。
「様子を見にきたって言ってたけど…」
「やっぱ、心配だったんじゃねぇの?」
視線の先にはイガラシがいる。
否定できないだけに、彼も肩を竦めるだけだ。
「さあ、練習再開!」
「おう!」
威勢よくグラウンドに散るナインを見ながらイガラシは思う。
(持っててくださいね、谷口さん。俺、絶対、墨高行きますから!)
――― この誓いは、のちに現実になる ―――
(終)