詩室

▼書込み 

03/16(Sun) 02:14
2014.3.11
mog

見上げれば穏やかな空

足もとを濡らす細波

落ちていくオレンジに

涙の色が絡み付く



目に見えなくても眩しい景色

耳に届かなくても賑やかな音

セピアに飾られた僕らの暮らしは

傍らで鮮やかに息をしている



肌寒い風、3月の空

遠くで春雷を待つ涙ぐんだ雲

ならんだ写真の中にあの人を見つける

あの日の問いかけは未だ返らず

あの時の答えは未だ届かず


時は止まったまま動き続ける

嫌でも僕らの前に朝日は昇り

無理やりに背中を押されて僕は進む

今を歩ける慶びと

今を共に歩けない哀しみに

居すくまる僕を前へと追いやっていく





見上げれば穏やかな空

足もとを濡らす細波

落ちていく視線の向こうに

瓦礫の山が立ちふさがる



僕は前に進む

僕らは歩いてゆく

残された僕らは残されたままじゃいられない

時は不意にうねりを見せて

僕らの内側を波立たせる



それを頼りに

僕らは

歩いてゆくんだ



ただ、

今だけは、

この鐘の音が鳴り止むまでは、

時が足音を止めた

今だけは



見上げて



あの風景を

あの音を

思い出を抱えた

あの頃と変わらない空を・・・



波間に触れて一際輝くオレンジに

ぎこちない街の移ろいが呑みこまれていく

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