彩りの栞
□その笑顔の為に
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―――秋も深まり、鮮やかに色付いた甲斐の山々
躑躅ヶ崎館の裏側手の山
この山も見事な色彩で彩られている
「見事な紅葉ですね」
山道を歩きながら感嘆したように桜姫が呟いた
思わずその景色に見入ってしまう
「そうでしょう?俺もこの景色は好きですね」
桜姫の手とって歩いていた娘姿の才蔵も景色を見つめながら呟いた
「ごめんなさいね、才蔵。
紅葉が見たくて、付き合ってもらって…」
申し訳なさそうに謝る桜姫に才蔵は優しく微笑んだ
「謝る事はないですよ。
むしろ、桜姫様はもっと我が儘言ってもいいんですよ?
俺達だったらいつでも付き合いますからね」
片目をつぶって茶目っ気たっぷりに才蔵が言う
「ふふ。ありがとう、才蔵」
そんな才蔵に桜姫が微笑み返した
「むしろ…今日、言っていただけて好都合…」
そこまで言いかけてはっとした才蔵は口を押さえた
「…才蔵?」
そんな才蔵を不思議そうに桜姫が見上げた
「な、何でもないですよ?
さっ!!俺のお薦めの場所までもう少しですから」
才蔵はそうまくしたてると少しだけ早足で歩き出した