短編小説


□近く近く
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今日の朝ごはん担当はルークだった。


両面がこんがり焼けたトーストとカリカリのベーコンに目玉焼き、ついでに軽いサラダも加えて準備完了。



「うん!上出来、上出来」



ルークが満足気に言いつつ時計を見れば、
いつもなら弟が起きている時間に首を傾げる。


寝坊かな、と思い、着ていたエプロンを畳んだルークは、めずらしく起きてこない弟を起こしにいく。



「ユーリー、朝だぞー」



コンコンコン、と扉を叩いた。

だけど返事がない。


あれ?っと思って聞耳を立ててみても、中からの反応がなかった。


ルークはなかなか起きて来ないユーリに焦れて、ついにガチャっと扉を開ける。



「おーい、ユーリ!」



その声に、もそりと布団が動くが、しばらくするとまた動かなくなった。


…どうやら今日は本当に寝起きが悪いらしい。


たくっと文句を垂れながら、ルークはベッドに近付く。



「こーらー、学校遅れる」



ぞ、と言い終わる前に、不意にがしっと腕を捕まれた。


えっ。


と思った時には、そのまま一気に布団の中に引きずり込まれてしまう。



「ぎゃあっ!」



ユーリの鎖骨に鼻をぶつけて、思わず潰れた声を出した。



「なんなんだよ、もう!」



と、ふざけているだろう相手を睨みつけてみれば、
その瞼は未だに閉じたままだった。



(こ、こいつ、まだ寝てるし…!)


というか


(ち、近…っ!)



思いの他、すぐ近くに弟の整った顔があってドキリと心臓が跳ねた。


顔が近すぎて、彼の睫毛一本一本が見えてしまうほど。




見慣れた顔のはずなのに。



なのに最近は、ユーリとの距離を妙に意識してしまう。



更にくっついているところから、体温や彼の髪の毛の匂いをしっかり感じて、ぼっと顔が沸騰する。



「……っ!!」



や、やばい…!と思った瞬間、勝手に手が動いていた。



「……お、起きろバカタレ―――っ!!!!」


――――ドスッ!!!


「いっ…!!」



思わず腹に一発。



小さな悲鳴をあげて、寝起きの悪いユーリがようやく目を覚ました。



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