短編小説


□兄弟だけど 後編
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おかしい、どうしてこうなった。


「ガイ…!ひっく、おれどうしたら…っ」


「…あー、わかった。わかったから、とりあえず落ち着け」


完全に酔いが回っているルークをなだめながら、定員にこっそりお冷やを頼む。


おかしい。

始めはルークの弟(…確か名前はユーリとかいう)の自慢話を聞かされていたはずだ。


『あいつすげぇんだぜ!格好いいし、喧嘩強ぇし、料理だってちょう上手いし!あ、あとな!云々』

と、まるで自分のことのようにイキイキと話すルーク。


ルークとは大学からの付き合いだったが、彼がとても家族思いで、特に弟に関しての思い入れが強いのは知っていた。


今時珍しいくらいのブラコンだな、と。


最初は、それを微笑ましく聞いていた。


しかし。


「ひっ、く…ユーリのやつ、生意気にもデートスポットとか、探してて…」


「…まぁ年ごろだしなぁ」


「何だよっひとに隠れてこそこそとさっ。
だいだい、付き合ってるやつがいるなんて…ひぐっ、兄ちゃん知らなかったちゅーのっ!」


「…お前は娘を持つ父親か?」


「ユーリのばか!あほ!すけべ〜っ!」


…いや、スケベは関係ないと思う。


ルークはうわぁあんと泣きながらカウンターに突っ伏してしまった。


完全にただの酔っ払いだ。


明日が土曜で本当によかった。



まぁ確かに、最近やたらと元気がないルークを無理矢理引っ張り出したのは自分だが…。



普段は弟が家で待ってるからとルークを飲みを誘っても、なかなか色好い返事がくることはない。


けど、ここまでどんよりなルークも珍しく、これは友人として放っとく訳にはいかないと半ば強引に誘った結果がこれである。



「ガイ、ガイぃ…やだよぉさみしぃよぉ…」



…そう、友人として。


決してなんだその上目使いお前それ狙ってんだろうまんまと乗ってやろうかこの野郎なんて思っていない断じて。


「…ルーク、お前ちょっと弟に固執し過ぎなんじゃないか?この機会に弟離れしたらどうだ?」


別に自分を見てほしくて誘導しているわけじゃない…断じて。


「……おとうと、ばなれ…」


ルークは含むように俺の言葉を反芻すると、再びじわりと目一杯に涙を溜めた。


しまった、せっかく泣き止んだのに。



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