短編小説


□小さな男の子
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「つっかれた〜…」


ルークは固くなった肩を上にくんっと伸ばした。


溜めていた雑務をやっとの思いで終らせ
一息入れようと、ルークが向かった先は食堂。



「パニール、何か甘いもんない…?」



ルークはぐでっとカウンターに突っ伏しながら、厨房でてきぱきと働いているパニールに声をかけた。


疲れ切った体は今、極限に甘いものを欲している。



「あらルークさん、お疲れ様です。今用意するので少し待ってて下さいね」



ルークは彼女の気前のいい返事に感謝ししつつ、何気なくカウンターの端に目を移した。


すると何やら派手な色の、細々したものを発見。


好奇心から手に取ったそれは、小さい頃に良く食べたジェリービーンズだった。


「うわ、懐かしー」


昔ガイに町で買って来て貰っては、よく一緒に食べたものだ。


まさかそんな思い出の品を、こんな所でお目にかかれるとは。


(…ここに置かれてるってことは、食ってもいいんだよな?)


と、ルークは勝手に判断し、ジェリービーンズをひょいと口に含んだ。


もぐもぐと口を動かせば、口一杯に広がる甘い味。



「んーうめ〜」



その様子を見ていたパニールは、支度をしながら微笑ましそうに口を開いた。



「ああ、それ。さっきジェットさんが忘れていったものなんですよ」



ごっくん。



「………」



え、誰が何だって?


ジェイドが…忘れていった…?



(あの、ジェイドが…?)



途端に、さぁと、ルークの頭から血の気が引いていく。


あの、ジェイドが。

こんなガラにもないものを作って、ただで済んだことが今まであっただろうか。

いや、ない。(反語)



ルークは固まった。


一体どれくらい固まっていただろう。



(―――ど、どうしよう!?どうすればいいんだ!?
と、とりあえずトイレ!?トイレで吐き出すべきか!?)



ルークはグワグワと揺れる頭を何とか必死に整理する。


そしてひとまずトイレへ向かおうと、慌てて振り返ろうとしたところで
背中をポンと叩かれた。



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