短編小説
□『ばかな子の病』
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「38度…は、8分?」
ルークはそれを見るなり、体温計を持つ手をダラリと床に落とした。
(…見るんじゃなかった。つか、計んなきゃよかった…)
なんて、そんなことを思っても後の祭りだ。
原因は、…たぶんアレ。
寝る前に少しだけと、机に向かった。
最近はナディの動きも活発化していて、その対処や皇国への報告に追われていた。
事態は深刻化しつつある。
しかし、親善大使として各国を遊説して回る、という本来の目的も怠る訳にはいかない。
寝る間も惜しんで書類に手を伸ばした。
本気でそうしなければならないような状況だったから。
だから昨夜も、風呂から上がるなり半端にしていた報告書を終らすべく、筆を取った。
ついつい、髪を乾かすのも忘れて。
気付いたら、何と朝だった。
机から飛び起きて、喉が痛いと感じた瞬間「やっちまった」と、頭を抱えた。
何だか体が重いし、視界がぼぅっとする。
(…まじかよ…、休んでなんからんないのに…)
ただでさえ地位の高さに反して、力不足な自分に負い目を感じているというのに。
ルークは気合いを入れるため、パンパンッと数回自分の顔を叩いた。