短編小説
□『朱の女神、黒の騎士』
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ここはグランコクマの一角にある"テオルの森"。
森が深く小物だが魔物も住み着いているため、
狩りや山菜取り以外では、あまり人は寄り付かない。
しかし、ルークにとっては最高のサボり場所であり、お宝の発掘スポットだ。
「これ関節痛に利くんだよなぁ。
酒場のじぃさん腰痛って言ってたし、きっと喜ぶぞ〜」
「ワンッ」
「お、ラピードもそう思う?」
ジェイドにも持って帰ろうかな、とも思ったが
…殺されそうなのでやめておこう。
ルークは鼻歌混じりに薬草摘みを再開する。
喜ぶ人々を、想像しながら。
その時、
――――キィィン!!
微かに金属のぶつかり合う音が聞こえる。
ルークはピタリ、と動きを止めた。
「今の…刀の音だ」
間違いない。
自分も剣術を扱う身だ。
誰かが戦ってるんだ。
(こんな所で?何のために?)
考えられるのは決闘…もしくは、山賊。
もし人が襲われているなら、放っておけない。
ルークは腰にある護身用の剣を確認すると、もう一度耳をすます。
――――キィン!!
(…あっちだ!!)
ルークが駆け出すと、ラピードも追いかけるように走り出した。