短編小説


□『朱の女神、黒の騎士』
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ここは、水上の帝都グランコクマ。

その中心を担う宮殿を、今日も今日とて
金髪の青年がせわしなく走り回る。


バンッ!と壊れる勢いで、ガイは執務室のドアを開け放った。


「ジェイドの旦那…!ルークを見なかったか!?」


ジェイドと呼ばれた男は肩をすくめ、
「…またですか」と呟いた。


「ああ、ちょっと目を離した隙に…!」


「やれやれ。困ったお姫様ですねぇ」


この国の姫君、ルークの脱走劇は
実のところ日常茶飯事。


学業や政治よりも、自然や人々とたわむれることを好み、
女でありながら剣術を特技とする。


それゆえに、あの無邪気な笑顔には、
誰もが魅了されるものがあった。


が、仮にも一国の姫君。


彼らの心配は尽きない。


「おそらくラピードも一緒でしょうし、大丈夫だとは思いますが…」


「ルークぅぅぅッ!!」













少女は長く朱い髪をなびかせ、草むらをかきわける。

その後ろには片目に傷痕を残す犬が一匹。


「薬草、見ぃーっけ♪」


ルークは探し物を見付けると、満面の笑みを浮かべる。

そして薬草が生え広がる原っぱに座り込むと、
一つ一つ丁寧に摘みはじめた。
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