短編小説
□かんちがい
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ここ、どこだ?
ぼやぼやしていて、わかんない。なんで?
…あ、視界がはっきりしてきた。
そっか、思い出した。ここ、教室だ。
でも、誰もいない。
教室が夕陽に染まって、何だか燃えてるみたいに真っ赤だ。
…て、あれ?今もしかして放課後?
…やばッ!ユーリ待たせてんじゃん!
急いで教室を出ようと振り返る。
すると目の前に壁が広がり、それとぶつかる。
ん?これ、壁じゃない…。
顔を上げるとそこに立っていたのは、今まさに会いに行こうと思っていたユーリ本人。
どうやら壁だと思われた正体は、ユーリだったらしい。
よかった、今ちょうどそっちに向かおうと思ってたんだ!
すると、深い深い紫色の瞳と目が合った。
ドキッと、心臓が脈打つ。
そうだ…俺ユーリが好きなんだった。
…相変わらず、綺麗な顔。
神様が、いかにも気合いを入れてつくりましたって感じ。
そんなことをぼんやりと考えてると、すっと、ユーリの指が俺の唇に触れる。
その指がゆっくりと唇をなぞったかと思うと、
今度はユーリの顔が近付く。
え、え、うそ。
ちょ、ちょっと待って、それ、やばいッ。
ま、待って!待ってってば……ッ!!