素敵な頂き物
□たなや志穂様より
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□君は僕のもの
ルークはとても困っていた。
ハロウィンだからと言って屋敷に戻されたのは良しとしよう。ユーリ・ローウェルをはじめとする仲間たちも招待してくれたわけなのだし。
が。
「着せかえ人形は勘弁してほしい……」
仮装しようということになって、何故か己だけ衣装を自分で決めてはいけないと言われ、シオンが歯止め役として待機してくれてはいるものの、目下、母シュザンヌとエステルによって着せかえ人形と化してしまった。
「こちらはどうです? きっと可愛いと思うのですけど」
「まあまあ、良いわね。ルーク、着てごらんなさい?」
「は、はぁい……」
ルークの声はすでに疲れ切っている。仮装衣装を着るたびに、これで最後これで最後と言い聞かせてはいるけれど、それもそろそろ限界だ。
「これでいい?」
「待ってください、ルーク。ここに尻尾を」
「さあ、これも付けて」
ブラウスにカボチャパンツ。猫耳付きのとんがり帽子にリボンベルトに付けられた尻尾。首には鈴、足元は縞模様のニーソックスに丈の短い皮紐のブーツ。
……何が良いのか、理解できない……!
「可愛いです、ルーク!」
「(着替えたい、着替えたいっ……!)」
ルークの内心の葛藤などお構いなしにシュザンヌとエステルはルークを褒めそやす。
結局、着替えたいというルークの願いは叶えられることなく、エステルに手を引かれるまま、ユーリたちの待つ広間に連れて行かれてしまった。扉を開けた瞬間、彼らがぽかんとしたのを見て、似合ってないんだと勝手に勘違いしたルークは一気に涙を溜めるとその場から逃げるように走り出した。
「ルーク!」
いち早く我に返ったのはユーリで、逃げ出したルークを追い掛ける。
ユーリはさほど苦労せずにルークを見つけることができた。が、やはり先にシオンが見つけていて、少し悔しい。
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