短編小説


□兄弟だけど 後編
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カウンター席に近付くと、ルークに付き添うように座っている男がいた。


ユーリに気付き顔を上げたその男の顔を見れば、友人のフレンに似ていて少々驚く。


向こうは向こうで興味深そうにユーリを眺めた。


「君がユーリくん?」


「……ああ、」


その呟きにユーリは軽く答え、服のポケットにあらかじめ突っ込んであった札を男に渡す。


「わりぃな、足りなかったら立替といてくれ」


色からすると一万円札が一枚。


そして、兄が世話になったと言ってルークの肩に手を掛けた。


姿を見て、何となくほっとする。


しかし、ルークの目元が赤いのに気付いてすぐに顔を歪めた。


酒で赤いだけじゃない、


「…泣いてたのか…?」


無意識に思い当たった答えをぽつりと漏らす。


するとその呟きに、男は苦笑しながら口を開いた。



「色々思い詰めてたみたいでな、気付いたら泣き上戸に入っちまって。
…それから今日のこと、叱らないでやってくれないか。今日は俺が強引に誘っちまったんだ」



侘びるように頭を掻いた男に、ユーリは重い溜息を溢す。



「心配しなくても、そんなつもり毛頭ねーよ」



アンタに言われなくても。


飲み込んだ言葉尻が苦かった。



――思い詰めてたって、何を。



ユーリは叱るなんていう見当違いなことより、自分の知らない所で思い悩むルークに、焦燥感を掻き立てられていた。



それと同時に、ガラにもないことを思う。



悔しい、と。



そいつとルークが自分の知らない所でそんな話をしていたことが、悔しかった。


情けないが、認めるしかない。



人はそれを、…嫉妬という。



今、初めて自覚した。




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