短編小説


□兄弟だけど 後編
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「ぅえっ…お、おとうとばなれ、むり…むりぃぃぃっ」


…うん、俺が悪かった、だからそんなうるうるな目でこっち見んな目に毒だっつってんだろ。(言ってないけど)


…つかこれブラコンの域越えてないか?


ここまで行くとむしろ、



と、思ったところで『ジャガジャージャジャジャー♪』とけたたましく携帯が鳴った。


このマニアックな着信音はルークの携帯以外他にない。


「おーいルーク、携帯鳴ってるぞー」


「…んあっ?」


「携帯だよ、多分電話じゃないのか?早く出ないと切れちまうぜ」


「ん〜…、ガイ、出てー」


言うなりルークはうとうとと船を漕ぎ始めた。


…自由でいいなぁおい。


仕方なしにルークのポケットから携帯を取り出し電話に出る。



「あーもしもし、こちらルークの携帯ですが、」


『…………アンタ誰だ?』



開口一発の発言に少々たじろぐ。


相手は若い男の声だ。

しかもかなり訝しんでいるご様子。


…まぁ電話に出たのがルークじゃないんだから当然と言えば当然か。



「あ〜、っと俺はルークのダチ。で、ルークは今酔い潰れちまってて電話に出れなくてな」


『…ルークが?』


「そう。なんで、代わりに俺が」



言うなり相手は黙り込でしまった。


何か大事な話でもあったんだろうか?

…埒あかないし、ルーク起こすべきか…?


とかなんとか思ってたら、電話越しからでかい溜息が聞こえた。



『…兄が迷惑かけたみてえで。今から回収しに行かせてもらうけど、いいか?』


「…へっ?あ、ああ、それは構わないけど」


『じゃあ悪ィけど、それまでそいつのことよろしく』



言うなりブツッと電話が切れた。

思わず呆然と携帯を見つめる。


……兄?つーことは今のが噂の弟、ユーリくん?


つかわざわざ回収しに来なくても、ルークはちゃんと家まで送り届けるつもりだったんだが…


「あっちもかなりのブラコンってことか?」


なんだ、二人でブラコンってことで何も問題ないじゃないか。


じゃあルークは何をそんなに悩んでたんだ?


…やっぱあれか、弟に付き合ってる奴が〜ってやつか?


…でもいずれはお互い恋人ができるし、結婚だってするだろう。


そしたら今まで当たり前みたいに隣にいた存在が、遠ざかるようにいなくなってしまう。


それが、今のルークにはきっと悲しくて堪らないのかもしれない。


ルークがこれまで彼女を作ろうとしなかったのは、弟一直線だったからだと今更ながらに分かった。


しかしそれが、弟に色恋話が浮上したことで、嫉妬というか裏切られた感じがするのだろう。


多分、ルークのこのささくれぶりはそこから来ている。



……なんて、俺一人で考えててもしょうがないんだが。


何にせよ、これはルーク自身が自分の気持ちに整理をつけないと意味がない。


恐らく、ルークだって頭ではどうしようもないことだと分かっているんだ。


今はただ、感情がついていかないだけで。



すっかり夢の中のルークに苦笑しながら、弟やらが来るのを待った。



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