短編小説
□かんちがい
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ルークは教室に入ると、ヨロヨロと自分の席に着く。
朝は色々と散々な目にあった。
結局、ユーリが迎えに来る時間まで、ルークは唸り続けた。
そのため、当然朝食なんて取る暇もなく。
急いで制服に着替え、顔と歯をダッシュで磨く。
そして、まるでこれから戦場へと向かう剣士のごとく、いざユーリが待つ玄関へ。
平常心を装い、いつものように挨拶をする。
「おおおはよう!ゆ、ユーリ!」
…失・敗。
ユーリは、案の定いぶかしんで、「どーかしたのか?」と聞いてきた。
その優しさに不覚にもキュンとする。
「な、何でもない何でもない!さ、行こうぜぃ!」
ボカカッと赤らんだ顔を隠すように急いで先を促した。
それからの会話は、あまり覚えていない。
ただ、別れ際に、今朝直す暇がなかった寝癖をチョイチョイと、撫でられる。
「変な寝癖」と、可笑そうに笑ったユーリの顔は、殺人兵器並の威力だった。
これ以上触られたら完全にオーバーヒートするッと即座に判断し、そそくさと教室へ逃げ込んだ。
そして、今に至る。
(俺、このままだと死ぬんじゃないだろうか…)
本気でそう思った。