短編小説
□きっかけ 前編
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チッ。
思わず出た舌打ちが、相手の機嫌を更に悪くさせる。
だが、ユーリの苛立ちも舌打ち程度で治まるわけもなく。
人気のない路地裏。
現在、ユーリの目の前には、いかにも俺たちガラが悪いです、といった男どもが4人。
どうやら、自分は昔から妙に喧嘩絡みに巻き込まれやすいらしい。
だが売られた喧嘩はそら買うだろ、と相手をし続けた結果、不良の間では変に名前が広がってしまった。
だからこうして、相手をしているのだが…。
いい加減鬱陶しい。
「俺、囲まれるなら女の子がいいんだけど?」
「っるせぇ!そういう態度が気に入らねぇんだよ!」
どんな態度だろうが気に入らねぇクセに。
そう、心中で突っ込んだところで、男は不意打ちの如く殴り掛かってきた。
それを左手で受け止め、もう片方の手で相手の胸ぐらを掴む。
そして溝尾目掛けて思いっきり蹴りを入れた。
「おら、次来いよ」
そう言って、さっさと終らそうと決めたユーリだった。