捧げもの

□いつも、いつでも、いつまでも
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「ボク、負けちゃった…
でも楽しかった!」


「僕こそ。今日はそろそろお開きにしないと……」


ウィンディとギャラドスをボールに戻してから時計を見れば夜遅く


「え、帰っちゃうの?」


「まぁね…。明日から研究所に行かなきゃならないから」


「また研究?」


「うん。研究所にたくさんポケモン置いてきたし、今まで溜め込んだレポートもあるしね」


僕の本業はオーキド博士の助手だったりする
でも人手の足りない地方に行って研究の手伝いもする
明日からアララギ博士の手伝いをして欲しいと頼まれた
今回並盛にいたのは「ポケモンが暮らせる環境の確かめ」だった。そのレポートも書かないといけない
今日は徹夜かな……


「…そうなんだ」


「そんな残念そうな顔しないでよ
時間があればまた来るから。トウコかトウヤのどちらかとマルチしに来るし」


「ホント!?約束!絶対に来て!」


目を輝かせるクダリ
僕だって約束は守る。バトルをしたい時は大抵ここに来るし…


「本当だよ。じゃ、ここで降りないとね」


「ボクも行く!」


「そう?なら行こっか」


クダリと一緒にトレインを降りてホームを歩いていく
なんか、視線が凄いんだけど……。というか目の前を歩いてくるのって……



「クダリ!ようやく見つけましたよ!」


「あ、ノボリ」


「キョウヤ様!?どうしてダブルに行ったのです!?」


「は?」


「シングルよりもダブルの方がいいのですか?わたくしもキョウヤ様とバトルしたかったのですよ!?」


「だってクダリだって後始末が大変。っていうかクダリに何か用なら僕、帰るけど……」


迷惑になっちゃうと駄目だし
そう言えばノボリは僕を一瞥してから腕を引っ張られた
地味に痛い……。そこは火傷の跡や刀傷、打撲があるから


「……。クダリ、そろそろ書類を進めなさい
今日中に仕上げなければならない書類が貯まっています」


「えー……」


「えー……じゃありません。しなければ明日から朝御飯は作りませんので」


「嫌だ!じゃあ、やってくる!またね、キョウヤ!」


走ってブンブンと手を降りながら遠ざかっていくクダリ
やがてクダリの姿が消えたかと思うとノボリにホームの隅へと引っ張られた


「ノボリ……?」


怒ってる…。でも何で?
ギリギリと捕まれる腕が痛い


「…これは何か説明をくださいまし」


袖を捲り、現れた数多の傷を指差しながらノボリは強い口調で言った
バレるの早すぎ。でもこれ以上隠したら何するか分かんないし……


「イジメ、だよ
下らない草食動物からのね」


「どういうことです?」


「学校である女から告白されたけど興味は無いし、そんなの作るつもり無かったから断ったら怒りだして学校の奴らを使って僕を袋叩き
さすがに堪えるよ。火傷に刀傷、銃弾にバット、槍」


「無茶はなさらないでくださいまし」


「うん、分かってる
ねぇ、ノボリ。ヒトモシ余ってたりする?」


「?えぇ、控えめなヒトモシや臆病などいますが…」


「じゃあ一匹頂戴
ヒトモシの生態を調べたいんだけど僕の手持ちにヒトモシがいないんだ」


「なるほど…。では少々お待ちください
持ってきますので」


ノボリはコートを翻しながら離れていった
そしてウィンディをボールから出した
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