Ohno*

□100万回の誘い文句
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「……ほら、また断りやがる」

「ごめん、ニノ」



今日食べに行こうよ、って
何回誘っても同じ答え

“ごめん”


もう聞き飽きたよ
そのセリフ。



「何でですか?」

「うーん…」

「俺に黙って食い逃げしたから?」



ソファに腰掛けているあなたの横に
密着して座った。



「うん」

「やっぱそれなんだ」



この間、ある番組で言ってた
誘いに乗らない理由。

食い逃げして
俺に全額払わせたから、だって。

何年前の出来事だよって。


そんなの
一緒に食べにいく話しに
関係ねぇじゃん。



「100万回誘ってんのに」

「…実際そんな誘われてないからね!」

「俺の中ではそれくらい誘ってんの!!」



最近では食べに行くどころか
一緒に行動することすら少なくなった。


コンサート終わりとかさ
よくリーダーの部屋に行ってたのに。

何でか入れてくれなくなった。



「リーダー、俺のこと嫌いになりました?」

「えっ…!?」



突然の問いに目を丸くして
こちらを伺うリーダー。


そんな話を切り出したせいで
視線を合わせるのが難しい。

どうしようもなく混乱して、
あなたの膝の上に手を乗せた。



「本当は食い逃げしたからなんて理由じゃない」

「…………」

「俺のことが嫌いになったから…でしょ?」



言ってしまってから
言わなきゃよかったと後悔する。


もしこれで
“うん”とか言われたら?

本当に嫌われたんだとしたら?


そんなの…堪えられないよ……



「ニノ、」

「……っ!?」



真面目に切り返したあなたの声に
心臓が飛び出しそうになる。

ビビった俺から
申し訳なさそうに目を逸らすと



「ごめん…」



恐れていた答えが
返ってきた。

ちょっとは期待してたんだけどな。



やっぱり、
嫌われてたんだ。



「そうですか…そんなに嫌い…なんですね」



全てが終わったと思って
涙が頬を伝ったとき

あなたの温もりが
俺の身体を包み込んだ。



「…違ぇよ」

「……っ」

「勘違いさせてごめんって…言おうとした」



意外な展開に
黙ってこの胸にすがるしかなかった。



「本当は一緒に食いに行きてぇんだよ。ずっとふたりでいたいし、こうして…ね?」

「じゃ何で…!」

「何するか分かんないから…おいら…」



回された腕が背中をなぞるように肩へと移動すると、真剣な表情で俺を見つめる。



「ニノが好きすぎるんだよ。」

「……りぃだ…っ」

「好きすぎて…いつニノを傷つけるか分かんないから……」



だから一緒に食べに行ったりできなかった、と付け足すとまた抱きしめられた。



「ごめんっ…おれ……何も知らなくて…っ…」



鎖骨辺りに手を添えて、頭を預ける。

手をぎゅっと握ると、抱きしめるリーダーの力が強くなった。



「違う、ニノのせいじゃない」

「リーダー……大好きなの、本当に…っ」

「うん、おいらも大好き」



涙が止まらない俺を宥めるように、何度も耳元で“好き”を繰り返す。

それに合わせて頷くと、頬にチュッとキスされた。



「………///」

「じゃあ、ニノ。今度はさ……」





おいらと一緒に
デートしませんか?





‐END‐
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