Ohno*

□虹
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「うぉっ…!虹が出てる!!」



俺ん家の部屋の窓から
外の景色を眺めるリーダー。

どうやら虹が架かってたらしく
大慌てで俺の腕を引っ張る。



「あぁ、雨が上がったんですね。」



彼の横に並んで見てみると
確かに七色の放物線が
くっきりと蒼空に描かれていた。



「もうちょっと近くで見たいな…。」

「……?」

「よし、外行こうぜ!」



まだ腕を掴んでるその手が
再び俺を引っ張った。



「えっ、ちょっと…!まだクッパ倒してな……」

「後でやりゃいいじゃん!行こ!!」



威圧に負けた。

強引にリードする彼の後を
渋々ついて行く。





少し歩くと、蒼空一面が見渡せる
広い公園に着いた。


休日は子どもやその親で
賑わう場所だけど。

今日は誰もいなくて
シーンとしてる。



「ニノ!ほら上、上!!!」



無邪気に蒼空を指差すあなた
その姿はまるで子どもだ。



「…怪物ランドに虹はないんですか(笑)」



指差す方向を見上げると
綺麗な色合いが目の前に架かってる。



「おう!虹っつーのか、あれは!」

「そうですよ(笑)」

「虹さいこーぅっ!!!」



あなたは蒼空に向かって叫ぶと
見つめ合って、一緒に笑った。



「そうだ、おいら…あれ歌ってほしいな。」

「あれ?」

「一番好きなの、『虹』」



あれ歌ってるときの
ニノの声が大好きなんだ、って

んなこと言われたら
誰だって照れるだろ…///



「んぅ…いいですよ。」



ちょうど周りに人はいないし
気持ちを込めて歌った。

チラッとあなたを見ると
目を瞑って
…聴き入ってくれてるのかな。






一曲歌い終えると
くっきり描かれていた虹は薄くなり、
辺りは夕焼け色に染められた。

葉っぱに付いた雫が
それぞれ宝石みたいに輝いてる。



「虹がキレイだよ。いや、お前の方が…」

「え…?」

「テレはじめるきみに ありがとう…」



ゆっくり瞼を上げたリーダーは
優しく微笑むと
俺をギュッと抱きしめた。



「ありがとう。」

「リーダー///」

「おいらは言えるからね、」



抱きしめるのをやめると
手を絡めて繋ぐ。



「好きだよ。って一言。」

「…っ////」



微笑む彼を前に、
一気に顔が熱くなった。


この人無自覚だ、分かってない。

あなたにどれだけ
俺をドキドキさせる力があるのかって
分かってないよ…。



「……怪物くんのくせに」

「今は違うもん。」

「もっ…///故郷(怪物ランド)に帰りやがれっ…!!!」



上がりきった体温に堪えきれず
彼の手を振り切って先に歩いた。

当然のごとく
後ろから追ってくる気配。



「嫌だよ!パパ怖ぇもん(笑)」

「バカっ///」



本当にこれが
天然なのか、計算なのか…
わからない。

だからこそ
もっと知りたくなる。



(これからはちょっとくらいの我が儘。
 言ってもいいよ。
 でも…私にだけよ?)





夕日が姿を消して
街灯がつき始めた頃

俺たちは何も言わず
黙って指を絡め合った。





‐END‐

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