ヴェスペリア
□怪我。
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それは、ある日突然やって来る。
『蒼破刃!』
ユーリが可憐に剣を使い、魔物を切り伏せて行った。
『全く…話にもなんないわ。』
リタが呟いた。
彼女の足元には無惨な姿になった魔物が転がっている。
『おっさん…もう駄目だわ…』
『情けない事言ってんじゃないわよ』
『リタっちが元気過ぎるのよ…年よりは労ってよね』
『鬱陶しいのよ!!』
リタがキレると共に、カロルから危ない!と、声が聞こえた。
振り返ると、先ほど倒した魔物が腕を振り上げ、リタとレイヴンに襲いかかる寸前だった。
目を咄嗟に瞑る皆。
しかし、全くの痛みはなかった。
むしろ、いつも嗅ぎなれている心地の良い甘い香り…黒髪の青年…ユーリ・ローウェルの匂いに包まれているのだ。
『ユーリ!!』
カロルが声を上げた。
『回復するのじゃ!!』
レイヴンとリタは未だに状況が読めず、呆けたままだ。
『駄目ね。
今エステルは仕事で呼ばれているもの。』
ジュディスは落ち着いたような素振りを見せながらも、内心焦っているような顔を見せた。
エステルは今フレンに呼ばれ、帝都に居るのだ。
エステルが戻ってくるまでの間に、暇潰しで帝都の周りで戦闘してたのだが、最近魔物は強くなる一方。
少しの油断が命取りになる。
『とにかく、傷を防ぐのじゃ!』
パティが慌てた様子でユーリの側に駆け寄った。
やっと状況が読めてきたレイヴンが回復をしようとしたが、パティがそれを止めた。
『技使いすぎなのじゃ!それ以上使ったら、体に負担が掛かるのじゃ!』
『…僕のはほとんど回復しないよ!!』
『今はバウルに乗って帝都に行くことが先決ね』
そう呟くと、詠唱が聞こえた。
『聖なる活力ここへ、ファーストエイド』
現れたのは、金色の髪をした、彼だった。
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