ヴェスペリア

□闇。
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ラゴウを殺して、キュモールを殺して…おまけに、心の中では大きな存在だったドンを手にかけた。

どんなに足掻いても、最終的にたどり着くのは罪。言い直しても、結局は人殺しだ。
いずれは償うし、逃げるつもりもない。

それに、手にかけたことは…後悔はしてねぇ。

法に裁かれたとしても、貴族は軽い処罰で解放される。

たかが少しぐらい金と権力を持ってるからって理由でだ。

だから、汚い仕事を引き受けることにした。
そうしたらフレンの仕事は楽になるし、少しでも皆が笑顔になれる。

なのに…手に付いた血が…人の肉が裂ける感覚が、恐怖に怯えた顔が…

俺を見る目が…忘れられねぇ。

何を迷ってんだ!!
自分で選んだ道のはずなのに、揺らぐ自分がいる。

そんな矢先にエステルが言った。

『俺はいずれお前を切るかもしれねぇんだぞ?』

『その時は、私が悪いときです。』

そういう意味で言った訳じゃない。
いずれ、殺人鬼になるかもしれない…と、いう意味で言ったんだ。

けど、信頼してくれていることが、ヒシヒシと身に染み渡ってくる。

エステルだけじゃねぇ。
フレンもラピードも、リタもおっさんもジュディも、カロルもパティだって…皆俺を拒絶した目で見なかった。

あの時…騎士に捕まっていなければ…?

おっさんが、牢屋に入れられていなければ…?

女神像の秘密を教えてくれなければ…?

あの瞬間、エステルがフレンの名前を言わなければ、俺はどうなっていた?

人殺しなんてせずに、未だに、あの窓の所から下町を眺めていたかも知れねぇな。

------だが。

会えなかったら世界を巻き込む厄介な事に自ら主役として、巻き込まれずにすんだのに…会わなかったら良かった…と、いう気持ちが全くない。

微塵もだ。

騎士団に入っていた時とはまた違った感情。
隊長に抱いていた気持ちとは違う。


幸せなことだって思って良いのか?



END




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