ヴェスペリア
□闇。
1ページ/1ページ
ラゴウを殺して、キュモールを殺して…おまけに、心の中では大きな存在だったドンを手にかけた。
どんなに足掻いても、最終的にたどり着くのは罪。言い直しても、結局は人殺しだ。
いずれは償うし、逃げるつもりもない。
それに、手にかけたことは…後悔はしてねぇ。
法に裁かれたとしても、貴族は軽い処罰で解放される。
たかが少しぐらい金と権力を持ってるからって理由でだ。
だから、汚い仕事を引き受けることにした。
そうしたらフレンの仕事は楽になるし、少しでも皆が笑顔になれる。
なのに…手に付いた血が…人の肉が裂ける感覚が、恐怖に怯えた顔が…
俺を見る目が…忘れられねぇ。
何を迷ってんだ!!
自分で選んだ道のはずなのに、揺らぐ自分がいる。
そんな矢先にエステルが言った。
『俺はいずれお前を切るかもしれねぇんだぞ?』
『その時は、私が悪いときです。』
そういう意味で言った訳じゃない。
いずれ、殺人鬼になるかもしれない…と、いう意味で言ったんだ。
けど、信頼してくれていることが、ヒシヒシと身に染み渡ってくる。
エステルだけじゃねぇ。
フレンもラピードも、リタもおっさんもジュディも、カロルもパティだって…皆俺を拒絶した目で見なかった。
あの時…騎士に捕まっていなければ…?
おっさんが、牢屋に入れられていなければ…?
女神像の秘密を教えてくれなければ…?
あの瞬間、エステルがフレンの名前を言わなければ、俺はどうなっていた?
人殺しなんてせずに、未だに、あの窓の所から下町を眺めていたかも知れねぇな。
------だが。
会えなかったら世界を巻き込む厄介な事に自ら主役として、巻き込まれずにすんだのに…会わなかったら良かった…と、いう気持ちが全くない。
微塵もだ。
騎士団に入っていた時とはまた違った感情。
隊長に抱いていた気持ちとは違う。
幸せなことだって思って良いのか?
END
・