新たな魂の絆を結べ

□形違えども、ここに在り
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「彰…さん……?」
「はい」

戸惑う幽に、彰はこくりと頷く。
すると、幽を庇う形で騰蛇が顕現した。

「お前…どこから入ってきた」

闘将である自分は誰よりも気配に敏感な筈なのに、彰の気配は全く感じ取れなかった。

この女、ただのメイドではない

騰蛇が不審がる中、彰はたおやかな笑みを崩すことなく質問に答えた。

「勝手口が開いておりましたので、そこから」
「勝手口だと」
「ええ」

騰蛇の眼光が鋭くなったが、対する彰は騰蛇の威圧などものともしない様子で、言葉を続ける。

「章花様や猿鬼達から聞きました。ここには十二神将と呼ばれる式神達がいるとか…。しかも安倍家は有名な陰陽師の一族。気取られないようにしなければ、ここには近付けませんので」

驚かせてしまい申し訳ありません、と頭を下げる彰を見ながら、騰蛇はいつの間にか自然と警戒を解いている自分に気付いた。
本来ならば、己にすら気取られない程に気配を消せる者など、すぐにでも追い出すべきなのに、自分の中にある彼女への信頼がそれを許さない。
疑う以上に、彼女は蓮姫にとって必要な女性なのだ、と諌める声が、頭の中で絶え間なく響いていた。



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