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□一生幸福宣言
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熱かったあの時から、どれほど時が経っただろう

昔の自分達が見たら


今の自分達をなんて言うだろう



《一生幸福宣言》




思い出の場所は、夕日によって赤く染まり、同時にあの頃に戻ってきたような錯覚を覚える
きっと長い間ここに来なかったせいだろう
だから、こんなに懐かしく感じるんだ

いつの間にか目線は高くなって、昔より稲妻町が広く見える気がした
自分も年をとったんだな、と苦笑いした

あぁ、だがここに吹く風は昔から変わらないんだな
今でも優しい風が全身を包んでくれる

そう思いながら、顔にかかる髪をどかした


「髪伸びたな」


そう言ってきたのは、未だに変わらないトレードマークのオレンジ色のバンダナをつけている幼馴染みだ


「伸ばしてるからな、あの時から」

「そうだな、風丸の髪って俺と出会ってからの長さなんだよな」

「おいおい、それじゃあ円堂みたいに何も手入れしてないみたいじゃないか、なんだよ、お前のそのボサボサな髪」


そう言って風丸はククッ、と笑った
その姿は昔から何度も見てきた優しくて、綺麗な笑顔


「なんだよぉ、風丸の髪型なんて、エドガーじゃんか」

「はぁ!!?あいつと一緒にするなよ!?」


そう言えば、あははと笑う円堂の姿は
昔から変わらない、暖かくなるような明るい笑顔


「…変わらないんだな、本当に」

「風丸こそな」


瞳を閉じれば、懐かしい思い出が蘇る
楽しかったサッカーは今では辛いものでしかなくなった

何度目だろう、あの頃に戻ってと願ったのは
何年経っただろう、目の前の幼馴染みと……会わなくなってから


「風丸綺麗なままだ!というか、前より綺麗になった」

「お前は、まだそれを言うか!!嬉しくないって言ってるだろ」

顔を赤らめながら風丸は笑っている円堂の頭を殴る
このやり取りも数年ぶりだ


「何年ぶりだろ、こうやって風丸に会うの」


今まで、楽しそうに笑っていた円堂は眉を下げ、寂しそうに言った


「俺が円堂に別れを持ちかけて…からかな」


長い前髪に隠れていない風丸の右目が少し揺れた
あの時のことを思い出せば自然と手に力がこもる


「あの時はさ、すげぇショックだった。嫌だったよ、風丸と別れるなんて」

「オレだって悩んださ、別れたあと高校も違って連絡も無くて、本当に後悔だってしたしな」

だけど


今まで俯いていた風丸が顔を上げる


その表情は先程までとは違う、ふわりとした顔だった

あぁ、この顔に惚れたんだな、と円堂はそう思いながら少し心臓を高鳴らせた


「今では、その答えが間違ってなかったって思えるんだ」

「あぁ!俺もだよ!!」

「それに気づけたからこそ、お前に向き合わなきゃいけないと思ったんだ、だから今日ここに来た」


ずっと会えなかった
会ったらどんな顔をすれば良いかわからなかったから
だから、今まで入ってきた着信もどうしても取ることが出来なかった
これはお互いそうだったのだ


面と向かって話したらどこか可笑しくて急に笑いが込み上げてきた
今までのシンッとした雰囲気はどこにもない
あるのは、昔のような仲良い幼馴染み同士の戯れだ


「ククッ、そう言えば円堂もついに結婚かぁ」


そう言いながら、風丸が円堂の隣に腰をかけた


「逆玉の輿だな」

「そんな風に思ったことはないよ」

「だろうな」


彼の性格を熟知している風丸は自分で言っておきながらアハハと笑った


「そういう風丸もバックにでっけぇの構えてるんじゃないのか?」

「ハハ・・・、本当に後ろからの圧力が半端ないよ」


眼をそらす風丸に円堂は必死に笑いをこらえていた
その姿を見て彼の頭に拳をぶつける


「こっちだってな!あの鬼道を必死で説得してるんだよ」

「ぷぷっ、そりゃあ鬼道も悩むだろうな。大好きな妹手放すのも辛いし、同じく好きな風丸のお願いを聞き流すのも辛いし」


風丸はため息をして肩を落とした
そんな風丸の頭を円堂がなでる


「・・・やめろよ、ガキみたいだろ」

「でも、ガキだった頃良くやったよな」


顔を赤らめながら睨みつける風丸を気にしないように円堂はニカッと笑いながら手を退かそうとはしない
風丸も退かす気はないと気づき、未だ顔を赤くしつつ黙ってされるがままになっていた


「『音無』が『風丸』になるのももう少しかぁ」

「オレさ、春奈に出会えて本当に良かったと思ってる。そうじゃなきゃ、オレは未だにお前を引きずってただろうな」


その言葉に円堂も視線を落とした


「今日ここに来たのも、ハッキリさせたかったんだ。お前との関係を」

「・・・そうだな」


そう言って風丸はベンチから腰を上げ、クルッと円堂の方を向く


「愛してたよ、円堂。すっごく、一番愛してた」


過去を意味する言葉を漏らすと同時に風丸の眼から雫が一粒零れ落ちた
それを見て円堂もその場に立ちあがり風丸の頬を指でなぞる


「今でも好きだよ、でも一番じゃない」

「うん」


円堂は風丸を抱きしめた
昔より大きくなった体、だけど未だに細く小さく感じる


あぁ、自分の大きくなったんだな・・・


あの頃には戻れない
なら、今を精いっぱい生きるんだ


「これが最後だ、いっぱい愛させてよ。風丸」

「・・・円堂、今が終わっても」

「俺にとって、お前は大切な存在だよ」


そう言えば、今まで突っ立っていた風丸が円堂の背中に腕を廻してきた
一瞬だけだけど、昔の・・・自分達が愛し合っていたあの日に戻ってきたように思った

だけど、これが最後なんだ

頭の隅で思っている、残酷とも呼べる現実


「大好きだよ、大好きだったよ・・・風丸」

「うん・・・オレも、大好き・・・だったよ、円堂」




――本当は二人で歩んでいきたかったんだ。だけど、そんなの不可能だってわかってた。だから別れを告げたんだ
  いつか来る未来が今来たんだって、必死で自分を納得させて、お前の前では絶対泣きたくなかった
  

  なぁ、これが最後なんだから・・・少しは許されるよな




「傍にいる、泣いて良いよ」

「っ・・・えんどぅ・・・」


この時、風丸は初めて円堂の前で泣いた
声を上げて

頬に温かいものが落ちてきた
円堂も泣いてると気づくのに、そう時間はかからない


「もう、こんなことをしてやれないけど・・・これからも俺の事、支えてくれないか」

「・・・当たり前だろ、オレはお前の幼馴染だぞ。ずっとお前を支え続けてやるよ、雷門とは違う方法で」

「風丸はオレの唯一の幼馴染で、親友だ」


風丸はその言葉を聞くと顔を上げてやわらかく笑いかけた


「お前がこれから何をしようとしてるかなんてわからないけど、お前の行動は間違ってない。オレが絶対お前の助けになるからな」


言ってもないのに、自分が何かをしようとしていることが察しられてしまった
やはりこの幼馴染には敵わないと円堂はにこりと笑って見せた


「音無の事、幸せにしてやれよ」

「当たり前だ!お前と一緒にいた時以上に幸せにしてやるし、幸せになってやる」

「なっ!こっちだって風丸に負けないくらい夏未を幸せにしてやるんだ」


お互い睨みつけあった後、笑いがこみあげて来たので盛大に噴出した
こんな風に抱きしめあったりできないけれど、これからもこうやって笑いあって行きたい

二人の幸せの中には、こんな風に笑い合っている光景も入っているのだから


「絶対、幸せにしろよ」

「風丸もな」


これが本当の最後だ

そう言って円堂の顔が近づいてきた

このまま時間が止まってしまえばいいと、きっと昔の自分だったら願っただろうな、と風丸は頭の隅で思った

だけど、今は違う

大切な人が待っている

だから、これが最後なんだ


唇に触れるやわらかい感触


「さよならだな、オレの初恋」

「そうだな」


風丸は円堂の頬に触れる


「無茶するなよ、いつでも相談のるからな、親友として」

「あぁ」


風丸が円堂に背を向ける
その際に青い長く綺麗な髪が空を舞う

きっと、風の色というのはこういう色をするんだろうな
小さいころから思っていたことをぼそりと呟いてみた


「風丸!!絶対髪切るなよ!!」


最初はキョトンとしていた風丸だがニッと笑って


「約束だもんな」


小さい頃、二人でした約束
風丸が髪を伸ばして円堂が彼を守る

いつまでも二人はその約束を守り続けた
それは今も変わらない

これからは違う方面で幸せになろう


いつか、お互いが「幸せです」と言って笑いあえるように





「結婚おめでとう、円堂」

「お幸せに、風丸!!」





さよなら、幸せだった日々


こんにちは、新しい幸せな日々



いつか、また会おう




キミと笑いあえる日々







END


円堂さん結婚を必死で納得しようとした結果こうなった
自分で書いてて意味がわからなくなりましたorz
風丸さんは春奈ちゃんとくっついていれば、オレがおいしいです、俺得Vv
だけど、未だに鬼道との格闘していて結婚まで持っていけないという

結婚おめでとうよ、円堂さん。ケッ←

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