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□それはきっと無駄な努力です
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「さぁ、来たわよ!保健室!!!」

「あっあの〜、やっぱり止めませんか、男子を覗くのなんて///」


保健室の前で仁王立ちをしているブルーの横でクリスが顔を赤くしながらそう言って
道行く人々は、またかといったような目でブルーを見ていた

この学校ではブルーの暴走など日常茶飯事なのだ


「何言ってるの!?男子の発育測定なんて新聞のネタにもってこいじゃない!!!」

「少しは恥じらってください///」


流石は学級委員長だ、全ての言葉が正論である


「どちらかが、覗きに来ないとつまらないじゃない」


彼女は基本、面白さしか求めていない


「ウチの可愛いレッドとシルバーが覗きに来るわけ無いし、グリーンは興味しめさないし、ゴールドが来そうでも、シルバーが止めるだろうし」

「むしろ、平和で良いと思いますが」

「まったく、わかってないわねぇ、クリスは」


そう言ってブルーはため息を吐いた
顔には出さないが、クリスの内心イラッとしている


「この子を見習いなさい」

「ボクはレッドさんとグリーンさんが見れれば良いです」

「イエローさん!?」


ブルーが指差した先には黄色い髪をポニーテールにしているクリスにとって先輩にあたるイエローだ
彼女は保健室の扉を少し開け中を覗き込んでいた

この中にはまともな人なんていない
少なくてもまともな事を教えてくれる先輩はいない


「サファイアも誘ったんだけど『父ちゃんに怒られる』って言って断られちゃったのよねぇ」

ブルーの誘いを断るなんて、なんて勇者なんだ、クリスは心の底から関心した
本来だったら、それが普通の判断だ


「あっ、入ってきました!」


イエローがそう言えばブルーも扉の隙間からそれを覗き込む
くぎ付けって、と遠い目で見ているとブルーに腕をひっぱられた
見ろと言っているようだ

サファイアと違い断る事ができないクリスはしぶしぶ近くに座る


『やっぱりレッド達以外は皆顔がしょぼいはね』ヒソヒソ

『レッドさん達のレベルが高いんですよ』ヒソヒソ

『レベルってポケモンじゃないんですから』ヒソヒソ


しかし、実際見てみてもパッとするような男子はいない
周りから見ればかっこいい分類に入る男子もいるが、自分達はそうは思わない

つねに美男・美女に囲まれているせいで感覚が麻痺しているようだ
ブルーもつまらなそうにしている


すると、イエローが黄色い声を上げた


『レッドさん達入ってきました///』


イエローが興奮するのもわかる気がする
入ってきたレッド達は上の服を来ていなくて、下に学園のジャージを着ているだけだ

瞬時にブルーがカメラを構える
どこから出したのだろうか


『あぁ、やっぱりレッドさんとグリーンさんがずば抜けてかっこいいです///』

『あら、ウチのシルバーだって負けてないわよ』


二人で、だれが一番かっこいいかという談義が始まってしまった
陰ではクリスが『ゴールド///』と呟いていた


「レッド先輩、細くないッスか!?」

「そうかぁ?普通位じゃないか?」


シルバーが首を勢い良く横に振る
普通の男子より細い腰
無駄な肉もなく、締まっており、いつも服で隠れているため白い
女性だったら誰もが羨むかもしれない

もちろん、外で見ている三人も例外ではない


『何故かしら、この敗北感』

『ブルーさんは充分ですよ』

『そういうクリスさんだって……』


イエローが自分の体を見て酷く落ち込む
二人は掛ける言葉が見つからなかった

そんな事をしている間に、身体測定は続いている


「よっしゃー!!!シル公より高えぇ!!!」


ゴールドがガッツポーズを作った
どうやら、身長がシルバーより大きかったらしい
その隣で不満ながらも迷惑そうにシルバーが耳を塞いでいた


「その爆発頭に感謝するんだな」

「はぁ!?髪型は関係ねえだろ!!!」


再び二人の言い争いが始まる
回りはまたかと言ったような風に見ていた


「また負けたぁぁぁぁぁ!!!」


その二人の奥でもう一つ叫び声が響いた


「うぅ、昔は勝ってたのに」

「残念だったな、中等部の時に俺に抜かれてからか?」

「しかも、どんどん離されていってるし」


レッドは床に手をつきながら、そう言った
だいぶショックだったらしい


「もう、追い付けないな」

「まっまだオレだって伸びてるんだからわからないだろ!!?」

「無理だな」


グリーンがレッドの頭に手を被せて、悪戯っぽく笑った
それが癪に触ったのかレッドが軽くグリーンの肩を殴る
だが、頭から手の平をどけようとはしなかった

もちろん、ブルーはその光景をカメラに収めていた


『なかなか良いものが撮れたわ、いくらで売れるかしらVvVv』

『売っちゃ駄目ですよ!?』

『ブルーさん!いくらで売ってくれますか??』

『イエローさん!!』


陰で交渉がされているが、男子達は知ることはなかった


「じゃあ、オレもそろそろ先輩に追い付けるッスねVvVv」

「そんなことさせないよ、オレだってまだ伸びてるんだから」

えぇっとゴールドは不満そうにぼやいた
まったく可愛い後輩だ、レッド限定で

すると、彼らの近くに慌ただしく誰かが駆けてきた


「先輩方!聞いてください!!!」

「ルビー?どうしたんだ」


駆けてきたのはルビーでその手はエメラルドの腕を掴んでいた
必然的にエメラルドもこちらに駆けてくることになる

どうしたのだろう、と先輩組がルビーの顔を覗き込む
その表情はとても嬉しそうだった


「エメラルドの身長が五センチも伸びてたんですよ!!!!」


グリーンとシルバーは何だとでも言いたそうな目をしていたが
レッドとゴールドは素直に喜んでいる

これが冷めている奴と熱い奴の違いだろう


「良かったね、エメラルド!!!」

「うっうるさい、いちいち報告する事でもないし大袈裟なんだよ///」

「と、言いつつ一番喜んでるよなぁ」


ゴールドの言葉に言葉を詰める
どうやら、図星らしい

良かったな、と言いながらレッドはエメラルドの頭を撫でる
いつもだったら、子供扱いされて怒るのだが、先輩にはそんな事できなかった


「僕はてっきり身長が縮んでるかと思ったよ、あんな重装備で」

「うっうるさーい!!!」


そう言うと、どこからかマジックハンドが出てきてルビーの顔に向けて伸びた
その手は丁度ルビーの顔の中心にめり込む

回りの生徒(先輩組含む)はうわぁ〜っと言ったような顔で見ていた


『言いすぎね』

『エメラルド君、伸びて良かったね』

『クリスさん・・・』


外の女子たちもその様子を見て涙ぐんでいた(特にクリス)
このメンバーもだいぶ彼の保護者のようだ


「それにしても・・・」

「なんだよ、ゴールド?」


ゴールドがレッドをじろじろと見ていた
その光景に近くでグリーンが眉間にしわを寄せている

それに気づかず、レッドは首をかしげながらゴールドに訊ねた


「レッド先輩、痩せました?」

「はぁ?」

「前より絶対細くなってますって!!!」


そう言うと、ゴールドがレッドに抱きつく
周りの視線が一斉に集まるのがわかった

一部ではその場から立ちあがる者もいた


「なっ///」

「ほら、やっぱり。細くなってるッスよ」


グリーンの視線が突き刺さる
しかし、これもゴールドには予想済みだったようで、レッドに見えないように口元をニヤリとつり上げてみせた
グリーンの口元がピクリとひきつるのが見えた


「はっ離れろよ///」


そう言ってレッドはゴールドを引き剥がした
ゴールドは満面の笑みを浮かべている


「まったく///」

「……」


すると、無言でグリーンがレッドに歩み寄ってきた
どうしたのか?とレッドは首を傾げる





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