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□それはきっと無駄な努力です
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「超人たちの話について行けねぇ」

「流石は、先輩たちだな」


完全に話について行けなくなった二人は先輩達の様子をずっと見ていた
シルバーがブルーから二人の記録を見せてもらった

どの種目も、通常の高校生とは思えない数な気がする
そう言えば、先程から周りから騒がしい歓声が聞こえてきたが、この人たちだったのか
そう、シルバーとゴールドは頭の隅で理解した


「グリーンも少しは仕事ばかりじゃなくて運動したら?」

「それもそうだな、流石にレッドに負けるのは悔しい」

「はぁ!!?どういう意味だよ!!!ふん、そんなことしてもオレだっていつも運動してるんだから負けるわけないだろ」

「絶対って言えるかしらww」

「・・・」


レッドが口を閉じる
否定できないようだ、それも当り前の様な気がする
相手は運動神経抜群、成績優秀、そして美男子と完璧を絵で描いたようなグリーンだ
下手をすれば本当に勝てるとは言い切れない


「レッド先輩、どんまいッス」

「・・・(コクリ)」

「お前ら・・・」


まるで同情するかのような目で見てくる後輩にレッドは肩を落とし激しく落ち込んでいる

そんなレッドの頭をブルーがなで、グリーンが肩に手を回し引き寄せていた

仲が良い幼馴染・・・、といえるだろうか
世間では高校生と呼ばれている十代後半の彼らがこれほどまでにスキンシップ
これが彼らにとって日常なのがどうもわからない

シルバーがゴールドを見れば、今にでも何人かを殴りにでも行きそうなくらいに拳を握りしめていた
もう、いい加減突っ込むのは疲れた
シルバーはそんなゴールドを放置して自分の先輩達を遠い目で見つめていた



「私たちは、持久走は終わったから、あと身体測定だけね。あんた達は?」

「俺達はまだ、種目が残ってるよ」

「ふ〜ん、今年の体力測定もあまりネタが無いわねぇ。今年もグリーンとレッドの事かしら」


彼女達が言っているのは、新聞部のネタの事である
面白いネタがあれば調べつくす、どんな小さいネタでも逃さない。それが彼女たちのポリシーだ

ちなみに去年…というより、ほとんどのこの時期の新聞のネタはこの二人のことばかりだ
陰では、二人の結果から賭けをしている者もいるらしい
そして、毎年のように二人の写真(隠し撮り)がよく売れ、部費を儲けているとか
もちろん、レッドはその事を知らない(グリーンは気づいている)
残念そうにしていると、隣のレッドがそういえばと呟いた

何かあるのかと、ブルーは目を光らせる


「今年はオレ達より凄い子がいるじゃんか」

「はぁ?貴方達以上に凄い子?」


思い浮かばないようでレッド以外、目をパチクリさせた


「ほら、中等部二年の」

「もしかして」


グリーンが思いついたような素振りを見せる
流石だな、と言ってレッドは笑った


「一体、誰なんスか!?」

「それh「サファイアァァァァァァァ!!!!?」」


グラウンドに叫びにも似た大声が響いた
どこかで聞いたことのある少年の声


「なんとね、ルビー?」

「何じゃないよ!?おかしいじゃないか!!?」


騒ぎの元は中等部二年組のようだ
一見すればサファイアとルビーが言い争っている様子
しかし、最初から見ていればわかるだろう


「立ち幅跳びで、砂場を飛び越えるわけないだろぉぉ!!!!」



サファイアァァァァァ!!!!????


「流石、サファイアだなぁ。オレもあそこまでは無理だなぁ」
「あり得ねぇ、野生児ギャル半端ねぇ」


呑気なコメントをするレッドと違いゴールドは背中に汗が伝う
超人さんにとってはこれはその程度のことなんですか!?


「流石はココドラ(60kg)とアチャモ(2.5kg)を背中に乗せて、木から木に飛び乗れるだけはあるな」

「『期待の新人現る!』見出しはこれね!!!!もちろんアンタ達の事も書くからよろしく」

「どちみち書くのか」


グリーンが目をキラキラさせているブルーにため息を吐く
毎年ながら、まともかな事が書かれた覚えが無い、今年は自分が負けたことを弄られるのだろう

グリーンがレッドの肩に頭を乗せると彼は苦笑いを浮かべた
察したのだろう

近くから鋭い視線を感じるがグリーンは一先ず置いておいた


「なぁ、シル公」

「何だ」


ある一点をジッと睨み付けているゴールドが隣に立っているシルバーを呼ぶ
そんなゴールドの様子に何も言わず、軽く返事を返した


「オレさぁ、先輩達や、野生児ギャルを見てっと、さっきの短距離の結果がどうでも良くなってきた」

「奇遇だな、俺もだ」


いつでも、騒ぎの中心にいる自分達ですら、着いていけないものがあるのだと、再確認する


「今度は負けねえから、オレ達はオレ達の全力でやろうぜ」

「そうだな」



この時の二人はまるで悟りを開いたかのように遠い目をしていた
だが、嵐の1日はまだ終わらない


あと残っているのは


『発育測定』




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