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□それはきっと無駄な努力です
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年度の始まりはいつもこれがある

ただ自分の実力を測るためのものなのに

どうしてここまで熱くなるのだろうか



《それはきっと無駄な努力です》



「チクショウー!!!」


広いグラウンドに一人の少年の叫び声が響き渡る


「五月蝿いぞ、ゴールド」

「納得いくか!シル公、もう一度勝負だ!」

「測定は一回だけだろ」


ゴールドは人差し指を突き出しそう叫んだ
対するシルバーは呆れたようにため息を吐いた

騒動の発端は先程の100m走の結果からだ
携帯獣学園では、体力テストと発育測定が行われていた

そして、この100m走になってゴールドとシルバーで走ることになった
結果はシルバーの僅差の勝利

そして、今に至る


「そんなにやりたいなら、クリスに勝ってから来い」

「ちょっ、アイツに勝つとか無理だろ、アイツこの前、現役陸上部に勝ってたんだぞ」


クリスとは中等部代表生徒で真面目で綺麗な彼女にはファンが溢れているとか
しかし、そんな彼女は運動神経抜群
サッカー部のマネージャーだというのに選手より有能
先程の話のように現役陸上部をも負かしたのだ

そんな彼女に勝つなど困難な事
今の二人では不可能である


「なら、諦めろ」

「このヤロォォォ〜」

「あはは、またやってるなお前ら」


今にも飛び掛かりそうなゴールドの後ろから二人を笑う声が聞こえてきた
聞き覚えのあるその声にゴールドは動きを止める


「レッド先輩、こんにちは」

「よっ、シルb「せんぱぁぁぁぁぁぁぁいVvVv」」


礼儀正しく挨拶をするシルバーを余所に、挨拶を返そうとしたレッドに何かが突撃してきた
今まで騒いで暴れだそうとしていたゴールドだ


「いつから居たんスか?あっ、もしかしてオレの走り見てくれました?」


しかしそこにいたのは先程の彼では無い
金色の目をクリクリさせながら甘えるような可愛らしい後輩…を演じているゴールドだ
いや、レッドに対してだけこちらが素なのかもしれない
こういう使い分けは天才的だ


「ゴー、まず一度降りてくれないか?」

「あっ、スンマセン」


ゴールドは言われた通り素直にレッドから降りた
ちなみにさっきまでゴールドが倒れたレッドの腹の上な跨がるように座っていた
他所から見れば押し倒している状態

偶然なのか狙った事なのか、真実を知るのはゴールド本人だけ

「ハァ、ちゃんと見てたよ。二人共早いな」


「そう言うレッド先輩は、もっと速い…って、何でそんな汗だくなんスか!?」

「まるで、何かと一戦を交わしてきたかのような」

「あぁ、あながち間違ってないな」


苦笑いするレッドは額にいくつもの滴を伝わせていた
体操着も汗だくだ

すると、そんな三人の近くに誰かが歩み寄ってきた


「こちらが一戦交えた相手」

「「グリーン先輩!?」」


レッドが軽く肩叩いて示した相手に二人は驚愕
いつもは鉄仮面でクールな生徒会長がレッドと同じように汗だくで立っているのだ
しかも、肩で息をし、いつも以上に喋らないところを見ると、相当疲れている

グリーンはレッドの肩に手をかけ、体重を乗せている
シルバーが横目でゴールドを見れば口角がひきつっている


「どうしたんスか、グリーン先輩?そんなに疲れてwww」


嫌味ったらしく聞いてくるゴールドだが、グリーンは話せる状況ではない
すると、再び誰かが近づいてくる気配がする
しかし、今度は気配と共に甲高い笑い声が響く

近くでグリーンの舌打ちが聞こえた


「おほほ、今年もやったわねぇ二人とも」

「「ブルー先輩(姉さん)!!」」

ブルーは汗だくで疲れ果てている二人を見て、ニコリっと笑った


「今年はレッドの勝ちのようね」

「絶賛インドア中のグリーンに負けられるかよ」

「…レッドに負けるなんて屈辱でしかない」


ようやく喋ったグリーンの失礼な言葉にレッドは寄り掛かっていた彼をどける
ゴールドを見れば、ザマーミロとでも言いたそうな顔をしていた
分かりやすいとシルバーはため息を吐いたが知るものは誰もいない


「面白かったわよぉ、男子持久走。この二人なんてスタート直後、猛ダッシュなんですもの」

「えぇ、あれが普通くらいじゃないのか?」


楽しそうに話すブルーにレッドは口を尖らせながら不満そうにそう言った
その隣でグリーンも頷いていた


「「「(自分達にとって普通じゃないんですよ、超人さん)」」」


つい、三人の声がかぶってしまった
この二人の基準は他のものよりずいぶん高いのだから仕方がないことではあるが

校門辺りを見てみると、少しずつだが人が戻ってきている
どれだけ、後ろと差をつけてきたのだろうか、この二人は


「体力が無いレッドにしては、頑張ったわね」

「そりゃあ、グリーンには負けれないよな」


「良かったわね、ようやく勝てたんじゃない?前に勝ったのは・・・中等部の最後だったかしら?」


どれだけの間グリーンに負けていたのだろうとシルバーはレッドを見ると、目をそらせながら苦笑いしていた
本当の話のようだ
良かったですね、ようやく勝てて。心の底から思う


「たっ、短距離ではオレの方がいつも勝ってたけどな!!!」

「他は負けていたけどな」

「なっ!!そんなことない!!!」

「あながち間違ってないわよぉ〜、今までの記録を見るとレッドってば、体力とか使わない握力とボール投げくらいしか勝ってないわよ」

「「・・・」」


先輩達についてきていない、ゴールドとシルバーは目を点にしながらその光景を眺めていた
口を濁らせながら反論するレッド
淡々と事実を明確に言い表すグリーン
それに拍車をかけるブルー

どう見ても、レッドが劣勢だ
だが、そこが可愛いと二人は違う方面を見ていた
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