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□呼んで私の名前
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大切な人がつけてくれた大切な名前
だから
大切なあなたに呼んでもらいたい
《呼んで私の名前》
「エーフィー」
「ブイ」
「エーフィー」
「ブーイ」
さっきからこの繰り返し
いい加減どちらか折れろと思ってしまうようなどうでも良い言い争い
いつからこんな我儘になったのだろうか
自分の記憶を遡ると確か最初のころは大人しく静かな奴だった筈
「ブイって言ってくれるまで返事しないです」
そう彼女は変な言葉遣いをしてそっぽを向いた
こういう強情な所はトレーナー似だろう
主の気持ちが少しわかった気がする
そう思いながら俺はため息をついた
「マスターの悪口は許さないです」
エーフィーは紫色の瞳でこちらを睨み付けてきた
エスパータイプは厄介だ、相性はこっちが有利だが厄介だ
「…ハッサムは、ボクがブイって名前で嫌…ですか?」
するとエーフィーが静かに問いかけてきた
少し寂しそうに耳を下げながら
「嫌ではありません。ですが、それはイーブイの時につけられた名で貴女に合っていない、俺は呼ぶわけにはいかないと思う」
あくまで淡々と話す
この世界には自分の手持ちにニックネームをつけるものも少なくはない、少なくとも主の周りにいるトレーナーでつけている者は見たことある
俺の主はつけない方だが
せっかく進化したというのに、進化前の名前を呼ばれるのは気持ちが良いこととは思えない
それぞれだと思うが俺は嫌だ
ならば種族名で呼ばれた方が良い
エーフィーはこちらを見る
そして、俺の横に座り肩に頭を乗せた
「マスターにはボクと違って、未来を予知することなんて出来ないし、皆と違ってボクは特別だったから」
イーブイの多彩な進化のことを言っているのだろうか、それとも彼女だけあった特別な力のことを言っているのだろうか
「種族名は嫌じゃない、でもマスターがつけてくれた大切な名前です。ボクの宝物です」
苦しい過去を持っている彼女の数少ない宝物
今思えば俺は酷いことを言ってしまった
彼女の宝物を否定してしまった
俺の言葉はどれ程彼女を傷付けてしまっただろうか
数分前の自分を殴りたい衝動にかられる
しかし、隣にいる彼女が気にしないでと微笑んだ
「ハッサムの言うことも正論、ニックネームを変えてくれる施設もあるらしいから、きっと後悔する人もたくさんいると思うです」
でも、
「マスターは後悔してないし、ボクもこの名前が好きです」
可愛いです、と首を軽く傾げながら彼女は微笑んだ
とても綺麗だと思う
「イーブイやエーフィーは、珍しいけど世界中にはたくさんいるです、だけど『ブイ』って名前のエーフィーはボクだけだと思うです」
そう言って彼女は立ち上がり、クルリと振り返る
長い髪と尾が舞う
両手を大きく広げて世界中と表す所が子供らしさを出していて頬が緩む
「ボクはレッドという名のトレーナーのポケモンです。『ブイ』と名付けられた唯一のエーフィーです。誇り高いマスターのポケモンでいれることが嬉しいです」
頬を染めながら本当に嬉しそうに彼女は言った
「大切な人に付けてもらった大切な名前を…大切なあなたに呼んでもらえたら、もっと嬉しいです」
静かに少し不安そうに彼女がそう言う
もう、躊躇いは無い
「おいで、ブイ」
嬉しそうに飛び込んでくる彼女を俺はできるだけ優しく撫でた
彼女の全てを受け止めると決めていたのに
随分軽い彼女を抱きしめる
ほんの些細なこと
彼女の名前を呼んだだけなのに、心が満たされる
強情だったのは自分だったようだ
「大切なあなたの名前を呼ぶことが、こんなにも幸せなことだと知りませんでした」
「気づいてくれたなら良いです、これからは沢山呼んでです」
大切な人がつけてくれた大切な名前
大切なあなたが呼んでくれるなら
一生物の宝物
END
初ハブイ
よくわからない文章になったがブイちゃん可愛い可愛い可愛い
ハッサムさんは素直だから思ったことはズバッと言います、口数が少ないのは主似
緑さんと区別するため敬語にしたらなんか怖い
ブイちゃんしゃべり方変なのは個性
二人は五つくらい歳が違うとオレが嬉しい