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□一番最初に見てほしい
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あの宝石のような赤い目が好きだ
それを持っているあいつはもっと好きだ

あいつの目に映る自分が好きか、と聞かれれば首を傾げる

だけど、その目には誰よりも多く早く写してもらいたいかと聞かれれば

俺は首を縦に振るだろう




《一番最初に見てほしい》



早朝、幼なじみの女からアイツが帰ってきた、と連絡が来た
その報告を聞いた瞬間通話を切ったので、女が愚痴っていた内容は知らない


何故切った、と後で文句が来て煩くなるかもしれない
そう気付いたのはアイツの家に向かっている途中だった



アイツの家はマサラの端にある
それなりに大きい家に一人暮らしとは少し寂しい気がするが、当の本人は大抵家にいないので関係ない


家に着くと庭先ではフシギバナが気持ち良さそうに眠っていた
近づくと俺に気付いたのか蔓を伸ばし俺の腕に触れた
俺はその蔓を手に取り
「おはよう」と呟けば(たぶん)嬉しそうに微笑んだ


その蔓から手を離し、ポケットから鍵を取り出した
アイツが渡してきたこの家の合鍵だ

前に、こんなもの渡したら勝手に入っているかもしれないぞ、と言ったら
『グリーンだったら良いよ』
と微笑んだ

それが素なのか狙っているのか判断できないのが厄介だ

鍵でドアを開ける
いつもだったら埃臭いその家は綺麗になっていた
掃除したのだろう、疲れてるくせに

そんなことを頭の片隅で思っていたら奥からニョロボンが出てきた
アイツのポケモンは大抵家では放し飼いにされている


するとニョロボンは指を一歩立てて鼻下くらいにそえた
静かにしろとでも言っているのだろう
お前の口はその辺だったのか、と思っていたらニョロボンは奥に戻っていった

元々俺はあまり喋る奴でないことをアイツらも熟知しているためかあまり追求してこなかった

俺は言われた(?)通りあまり音を出さずにアイツがいるであろう一室を目指した
案の定、アイツはそこにいたが


枕に頭を埋め気持ち良さそうに寝息をたてていた
その腕の中には黄色い塊アイツの相棒のピカチュウだ

俺が扉を開けるとソイツは耳をピクリと動かしてこちらを向いた
いつもは少しつり上がっている目は寝起きのせいかトロンとしている

俺に気付いて一鳴きしようとする前に俺は先程ニョロボンがしたように人差し指を立てて口元に添えた
ピカチュウも自分の後ろで眠っている存在に気づき、口を閉じた
そして慎重に腕の中から抜け出す

俺はその脱出劇を見つめながら近くにあった椅子に腰を下ろす
アイツが、んっ、と呻く度に跳ねる尻尾を見ていて面白い

俺のポケモンはあまり感情で動くことがない(俺のせいかもしれないが)ので見ていて飽きない
トレーナーがトレーナーならポケモンもポケモンか


ようやく抜け出す事に成功したピカチュウが俺の肩に乗ってきた
俺はフシギバナのように「おはよう」と言ってやれば小さく鳴いた
あくまで小さくだ

随分となつかれたものだ
最初はあんなに毛嫌いされていたのに

俺はピカチュウの頭を軽く撫でてやり苦笑いを浮かべる
ピカチュウも気持ち良さそうにしている


すると再び俺達の目の前の奴が呻く
一瞬肩が跳ねてしまった

起こしただろうか?
顔を伺っているとその瞼がゆっくりと開かれる
焦点が合っていないその赤い目はどこかぼんやりしている


「レッド」


名前を呼んでやると赤い目が俺を捕らえる
俺だと判断するとレッドはフワリと笑った


「おはよう」

「あぁ、おはよう」


俺の肩に乗っていたピカチュウが降りてレッドに飛び付く
そんなピカチュウの頭を撫でてやっていた


「珍しいな、お前が俺より遅いなんて」


これでもレッドは生活習慣がなっていて、あまり怠けた生活はしない
逆に嫌っている方だ

俺はその分朝が苦手で気づけば昼頃なんてことも何度かある
今日に至っては、あのうるさい女に起こされたのだ


「あはは、昨日帰ってから掃除したから寝るのが遅くなっちゃって」


ポケモン達も手伝ってくれたと聞けば
眠っていたポケモン達(ニョロボンは起きていた)に納得する


「グリーンはどうしてここに?」

「お前が帰ってきたと聞いて」


会いたくなった、最後は言葉にしなかったが伝わってるだろう
俺は合鍵を見せながらそう言った

レッドは少し顔を赤くさせながら微笑んでいた


「グリーンより遅く起きるとか、悔しい」


レッドの頭を軽く小突いてやると、でもという言葉が続いた


「目覚め最初に見るのがグリーンの顔って幸せかも」


そう言いながらレッドが両腕を伸ばしてきた
その意味を捉えて、俺はレッドを抱きしめる

久しぶりの体温にホッとする
レッドも同じ事を感じているようだ


「放置された分、1日お前の時間をもらうからな」

「その予定だよ」


まったく、二ヶ月放置されたのにな
憎めない奴
いや、俺が甘いのか
こいつ限定で


「おかえり、レッド」

「ただいま、グリーン!」


レッドの目覚めが良くなると同時に
今日1日が良い日になる気がする

だが、その後ポケギアがなった
ディスプレイにはBlueという文字が浮かんでいた



END


初のspグリレです
うわぁぁぁぁぁ、緑さんのキャラがわかんねぇぇぇ
でも、イケメソだけど低血圧で微妙に可愛い緑さんが好きVvVv
赤さんは甘え上手
ニョロは何かと家事をやってくれそう、便利なポケモンです(笑)
お互いのポケモン達はお互いのトレーナーを信頼していると同時にライバルです

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