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□届かないあと0センチ
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豪炎寺と鬼道が応援していると言ってくれた
すごくうれしいけど・・・それは他の子に言ってあげた方が良い

オレはこれ以上、先には行けないんだから


「風丸!帰ろうぜ」

「焦るなって、まったく女子は準備が長いって知らないのか?」


そう言うと円堂はどこかぽかんとした顔をした
またか・・・


「お前、オレが女って忘れてるんじゃないか?」

「そっそんなこと無いって!!確かに小学生までは男のふりしてたけど、今はれっきとした女の子だろ!!」

「じゃあ、少しは静かに待ってろ」


あぁ、可愛くない
可愛くしてるつもりじゃないけど、ここまで男っぽくしてるから円堂に気にされないんだ
まあ、そうしているのはオレなんだけど

ファーストコンタクトが男としてだから、今から女扱いしろなんて無理だろうけど


「じゃあ、行こうぜ!」

「ハイハイ」


こんな風に隣に並んで一緒に帰れるのも『一郎太』だから

そんなとき、オレの視界にあるものが映った
ある店の前に数人の人が群がっている
その中に見覚えのある人も


「佐久間?」

「あっ!風丸」


その群れの中からぴょんぴょんと佐久間が跳ねていた
二人はそこに近づいて行く


「なんだよ、これ」

「いや〜、源田が・・・」

「「源田!?」」


そこはゲームセンターある一か所にみんなの視線が集まっている
その中から噂の源田がでてきた


「ようやく終わったぞ」

「お前どんだけ取ってんだよ」

「そっそれ、全部源田がとったのか・・・?」


出てきた源田は紙袋いっぱいに入った縫いぐるみを持っていた


「源田が意外にUFOキャッチ上手くてビビった」

「すごいな!!」


意外な源田の特技にオレは目を丸くしながら見ていた
円堂はその特技に目を輝かせていた


「いつも佐久間にあげていたんだが、流石に今日はとり過ぎたな」

「そろそろ、あたしの部屋がぬいぐるみで埋まるんだけど」

「そう言いつつ、いつももらってるけどな」


佐久間は顔を真っ赤にさせながら源田の背中を叩いている
本当に仲良いな・・・この二人付き合ってるんだよな
同じ幼馴染とは思えない


すると、オレの目の前に一つの大きなウサギのぬいぐるみが現れた


「風丸どうだ?このぬいぐるみは二つあるんだ」


受け取ったウサギのぬいぐるみは触り心地が良い
ハッキリ言って、こういうのはオレの中のストライクであって
誰にも言ったことないが、こういう可愛いものが大好きである


「ありがと・・・///」

「もう、可愛いな風丸はVv」


そう言って佐久間がオレに飛びつく
佐久間はオレの事をわかってくれている
彼女はすごく可愛いし、女の子らしい。オレとは正反対だけど、一時期男らしく振舞っていた時があったらしい
それでも、源田って言う素敵な人がいるんだよな


「風丸ってそういうの好きだったんだぁ〜」


オレの隣で円堂がそう言った
そこでハッとする。『一羽』が出ていたことを


「まあ、嫌いではないけど・・・」

「そうだよなぁ、風丸。そういうの興味なさそうだし」

「なっ、おい円堂!」

「佐久間、止めろ」


今にも円堂に飛びつきそうな佐久間を源田は静止させる
そうだ、お前達には関係ない
これはオレが選んだことなんだから。『一羽』を隠して『一郎太』でいくんだ


「まあ、オレは外とかで走ってる方が好きだしな」

「風丸と佐久間ってホント違うよな。風丸も、もう少し女の子らしくしたらどうだ?」


その言葉がオレの中に突き刺さる

『女の子らしくしたらどうだ?』

今まで、幼馴染の壁を壊したくなくて・・・必死で男っぽく装っていたのに
目頭が熱くなる


「オレ先に帰ってるから」


そう言って最後に笑顔を向けて3人に背を向けて駆けだした
後ろで佐久間がオレの名前を呼んでいたけど振り向けなかった

目から雫が零れる、止めれない




これ以上、円堂に近くにいけない
円堂がオレに振りむいてくれることはない

だったら、女の子らしく振る舞えばいいのに・・・

それでも・・・これ以上の距離を怖がってるのかな・・・
それとも、離れて行ってしまうのが怖いのか・・・
必死で今の距離を保ちたいんだ

だから、これ以上進めなくても
オレは男を装う


花も、実もつけない木
オレは何度も何度も枯れてしまえと思っていたのに

名残惜しく、水を与えているんだ・・・







今、願いがかなうなら
最初っから、こんな木生えてこなければよかった・・・

それか
貴方に出会う前の『私』に戻りたい


私は一人静かに木にもたれかかりながら涙を流した




END


切ないのを久々に書いた気がします
女体化アンケートで人気なので
でも、不人気の切ない系って・・・

これも塾で思いついたもの
風丸を片思いにさせるなら円堂君かなっとおもって
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