Short

□届かないあと0センチ
2ページ/3ページ

恋心に気づいたのは結構前の事だ
円堂の優しさ、強さ
近くにいる分たくさん感じる

そんな円堂にオレは惹かれていったんだ

でも、そんな風に思うのはオレ一人じゃない
円堂は気づいていないようだけどたくさんの女子が円堂に惹かれている
そんな中、オレが選ばれるわけがない

ならば少しでも円堂の近くにいたい
だから、オレは私を隠すのだ


「風丸!パス練習付き合ってくれよ!」

「あぁっ!!」


こうして円堂と一緒にいれるなら
『一郎太』でもいいんだ


「風丸!さっきのシュート良かったぜ!流石は風丸だな」

「ありがと」


サッカーをやっている時、円堂としゃべっている時、円堂の隣にいれる時
それがオレの至福の時だった

もっと円堂の隣にいたい
なのに、女であるオレには才能に限界がある


「豪炎寺!後でシュート打ってくれよな!!」


遠くにいる豪炎寺が首を縦に振っている
オレはそれを目を細めながら見ていた

豪炎寺は良いな・・・
今の円堂には豪炎寺くらいの強力なストライカーが練習になるのだろう

鬼道も、あの頭脳で円堂に何度も頼られている
羨ましい


そして、自分が惨めに見えてくる
特に才能もない
女だというのに円堂のそばにいたいがために男子しかいないサッカー部に転部して


あぁ・・・


「お前らがうらやましいよ。まったく・・・」


何の関係もない二人にこんなことをいう自分
ただの醜い嫉妬を二人にぶつけるなんて・・・本当に自分は馬鹿だな・・・


「何を言っている。風丸だって、充分に円堂に頼られているではないか」

「それは幼馴染っていう建前があるからだろ?それが無かったらただの女子さ」


ヤバい
自分で言っててなんだけど、目頭熱くなってきた


「お前は円堂に気があるんだよな?」

「アハハ・・・ばれないようにしてたんだけどな」

「他の奴らは気づいていないさ、俺達は他より多少勘が良いだけだ」


敵わないや、この二人には
気づかれてるんなら、もう少し女らしくするべきだったかな?
こんな男っぽい女がアイツに気があるなんて・・・二人も呆れてるよな


「円堂はモテるから、冷や冷やするよ。いつ円堂が取られちゃうのかなって」

「それは無いだろうな。お前がいる限り、誰も円堂にこれ以上近づけないだろう」

「周りの女子はお前と円堂が付き合ってるんじゃないかって言っている。お前が円堂の一番近い所にいるんだ」


一番近いところ・・・か
それってアイツの事が好きな奴にとって一番良いポジションじゃんか

そうオレは苦笑した


「一番近いからこそ、あとは離れていくだけなんだよ」


きっと、これから円堂にも好きな奴ができる
オレはそれを応援するしかできないんだ

それがアイツの中のオレだから

幼馴染って言う建前で円堂のそばにいるくせに
その言葉がオレの壁になってんじゃん


「一番近くても・・・あと0センチが誰よりも遠いんだよ」


どんなに手を伸ばしても・・・
『一郎太』の距離と『一羽』の距離が違いすぎるよ・・・






次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ