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□届かないあと0センチ
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どんなに時間が経っても

花を咲かせない

実を付けない

こんな木、枯れてしまえばいいのに・・・


それでもオレは水を与え続ける

いくらやっても変わらないとわかっていても




≪届かない0センチ≫





いつものように授業が終わり、帰りの支度をしている時だ


「おーい!風丸!!」


教室の入り口から自分の名前を呼んでいる少年がいた
オレの幼馴染の円堂守だ
早く部活に行きたいのかウズウズしている

その後ろに豪炎寺と鬼道の姿も見えた


オレはあいつらを待たせないように急いで荷物をカバンの中に詰め込む


「少しはおとなしくってことができないのか?」

「だって、早くサッカーやりてえんだよ!」


本当にサッカーの事しか考えていないんだな
ため息をつくと後ろで豪炎寺と鬼道が呆れた目で円堂を見ていた


「まるで、風丸は円堂の保護者だな」

「まったくだ」

「本気で言ってるなら怒るぞ」


もちろん、冗談だ
何回も言われたことがある
オレだって、幼馴染として円堂は放っておけない

これだから・・・


「どうした風丸?」

「えっ!?」


オレの様子を窺うように豪炎寺がオレの顔を覗き込んでいた
自分では平然を装っているつもりだったけど、気を抜くとすぐに外に出してしまう


「なんでもねえよ」

「そうか?」


笑えているだろうか

女のくせに男みたいな口調で
誰よりも走ることが好きで
円堂の幼馴染の風丸『一郎太』を

私は演じれているだろうか
風丸『一羽』でなく『一郎太』を


「風丸ぅ!豪炎寺ぃ!!早く行こうぜ!!」

「あぁ!行こうぜ豪炎寺。アイツが待ってる」


アイツのそばにいるためには
私はオレを演じなきゃいけないんだ


それがオレの

アイツと一緒にいるための唯一の術だから





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