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□もっと早く君を抱きしめることができてれば
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テレビからだとわからなかったけど
君、泣いてたんだよね?
悔しかったよね
だけど、今の僕のこの足じゃ、君の所にいけない
君をだきしめてあげることができない
≪もっと早く君をだきしめることができてれば≫
「痛った!」
そう言って、目の前の子が勢いよく地面に倒れた
そんな彼の所に僕は駆け寄って起き上がらせる
「大丈夫?風丸君」
「ああ、大丈夫だよ。ごめん、せっかく吹雪が新しい必殺技を考えてきてくれたのに、オレ何もできなくて」
しょぼんと俯く風丸君に僕は「大丈夫だよ」と声をかける
風丸君の速さは一級品だから、きっとすぐにできるからって
そう言うと、風丸君は照れたのか少し頬が赤くなった
久しぶりにみたその顔が鮮明に僕の眼に映る
ずっと離れてたからかな?
風丸君、こんなに可愛かったっけ?
そんな風に思っていると、目の前の風丸君が立ち上がって軽くユニフォームをはたいて砂を落としていた
「休憩にする?」
「いい、まだやる!!」
僕が下からそう訪ねれば、即答でそう返ってきた
努力家なところは変わってないんだな
僕がくすっと笑うとそれに気付いたのか恥ずかしそうに少し離れたボールの方へ駆けて行った
やっぱり変わらない
恥ずかしくなると視線をそらすか、少し離れたところに行ってしまうところ
「ほらっ、早く特訓再開するぞ///」
「うんVv」
それから、僕たちは離れていた時間の分を埋めるように二人で練習に励んだ
気づいた時には夕暮れで、二人とも泥まみれになっていた
「そろそろ終わりにしようか。あまり、遅れるとみんなが心配するから」
とくに風丸君の事になるとね
「えっ、もうそんな時間!?」
そんなみんなに心配される風丸君は気づいたように辺りを見渡して慌てて荷物をまとめる
そんなに慌てなくても大丈夫なのに、おもしろいな〜
そう思いつつも僕も風丸君の片付けを手伝う
もともと僕はそこまで荷物を持ってきていなかった
強いて言うなら風丸君が全部そろえてきたという感じ
周りが見えているというか、世話慣れているみたい
最後の一つをカバンに詰め終わると風丸君が僕に向けてありがとって笑いかけてくれた
ふわりと効果音がついたようなそんな優しい笑顔
あまり見れるものじゃない
こういうのは隣にいれる僕の特権なのかもしれない
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