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□下剋上
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練習試合の結果は相手校の試合放棄で雷門中が勝ったと聞いた
やっと、風丸さんが帰ってくる
ほんの数日いなかっただけなのに、僕には何カ月も経ったような気がする
それでも、なかなか風丸さんは戻ってこなかった

サッカー部はフットボールフロンディアという大会に向けてがんばっているそうだ
そのメンバーの一人に風丸さんも・・・

僕は本人に問い詰めてみた、いつ帰って来てくれるのかと
助っ人って言ったじゃないですかと・・・


久しぶりに風丸さんの走る姿をみた
走っていなくても風丸さんのこの速さは変わらない
やっぱり、風丸さんは陸上部に戻ってくるべきなんだ
風丸さんの立つべき場所はここなんだ


帰ってきてください、風丸さん




「サッカーをやるオレを見てくれ」


サッカーにこだわりだした風丸さんがそう言ってきた
明日から始まる全国大会に見に来てほしいって
それから陸上部に戻るかどうかを話そうって・・・

風丸さんがそう言うならと僕が言えばこちらに優しい笑顔を向けて微笑んだ
風丸さんはずるい

去っていく途中、あの先輩に会った
確か円堂さん・・・っていったっけ
軽く挨拶してきたけど、僕はそれを無視した

この人が僕から風丸さんを取ったのだから



風丸さんが好き
いつの間にか、僕にとって風丸さんは憧れよりもっと上の好意を向ける存在になっていた

だから、風丸さんが好きな物を好きになりたかった
風丸さんと同じものを見ていたかった

だけど、駄目なんだ
風丸さんを取ったサッカーが嫌い
風丸さんをサッカー好きにしてしまった円堂さんが嫌い



言われた通り、僕は陸上部のメンバーと試合を見に行った
一言でいえばすごかった

フィールドを駆ける風丸さん
まるで陸上をやっているように楽しそうで、輝いて見えた
陸上だけが、風丸さんの世界だと思ってた、でも違うんだ
風丸さんはここでもこんなに輝ける

サッカー部の人達は風丸さんを必要としてるんですね


風丸さんが河川敷で言った言葉が蘇る
陸上と違う
風丸さんはサッカーで違う輝きを持てるんだ

風丸さんがサッカーで頑張っていきたいと言うなら僕もそれを応援していきたい


でも、あきらめたわけじゃない
風丸さんが少しでも陸上部に戻ってきてくれると言ったら僕はすぐに取り戻す





「円堂さん、僕、諦めてませんから。絶対風丸さんには陸上に戻ってきてもらいます。その前に宣戦布告です」




貴方がただの幼馴染でないことくらいわかってる
風丸さんにとっても大切な存在であの人の一番近くにいれることを許される存在
でも、僕だって諦めたくない


だって僕は・・・





「僕はあなたの事が大っ嫌いです」




この人に負ける気はありませんから
年下だと思って、油断しない方がいいですよ

風丸さんを思う気持ちは誰よりも大きいつもりですから





END
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