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□下剋上
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入学した時から憧れだった

走る姿も、接してくれる優しさも
この人の傍にずっといたい、ついて行きたい

そのためだったら、努力を惜しまなかった

なのに・・・




≪下剋上≫




入学したての頃は特にやることもなく、部活加入に誘われても考えておきます。と言って流していた
運動が苦手なわけではないけど、特別何かがしたいとも思わなかった

でも、そんな僕を変えてくれたのが風丸さんだった

グラウンドの方が少し騒がしい
何かなとほんの好奇心で僕は引きつけられるようにグラウンドの方へ向かった

それは丁度陸上部がそれぞれのタイムを計っていた時
ある人に僕は衝撃を受けた


誰よりも速く、靡く空色の髪が美しかった
そして、あんなに楽しそうに走っている人初めて見たと僕は見惚れていたんだ

それが、僕が初めて見た風丸さんの姿だった

風丸さんは1年にしてエースで、今までいくつもの大会にその名を残していった
皆からは期待の新人と言われていたそうだ
進級してもその疾風の様な走りは衰えることなく逆に伸びていくばかり


僕はすぐに陸上部に入部届を提出した
風丸さんの隣で走っていた頃、胸がドキドキしてすごく楽しかった
1年生の僕にも優しくしてくれて、先輩からも慕われていた

もっと速くなって風丸さんの隣で走っていたい
風丸さんは僕の憧れであり、目標だった


だけど、ある日


「風丸ーーー!!!」


いつものように部活をしていると、校舎の方から大声で風丸さんの名前を叫んでいる先輩がいた
オレンジ色のバンダナで何やら看板を持っている

突然自分の名前を叫ばれたことにより周りの視線は一気に風丸さんに集まる
それが恥ずかしいのか、風丸さんは顔を赤くしながらキャプテンに言って列から抜けていった
向こうの方ではさっきの先輩を殴っている風丸さんの姿がちらっと見えた

何か話しているようだ
風丸さんはその話を腕を組みながら真剣に聞いている
少ししてからその先輩はどこかに走って行ってしまった
それからまた風丸さんは列に戻り部活を再開した
だけど、その間風丸さんは何かをずっと考えていた


そして、次の日・・・


「すみません、キャプテン」

「まあ、良いってことよ!近くに大会はないしな。戻ってきたらその分走ってもらうからな」


部室から聞こえてきたキャプテンと風丸さんの話
聞き取れなくてその後、僕はキャプテンに何だったのかと聞いてみた

サッカー部についてだったらしい
メンバーも揃っていないのに強豪校と練習試合をすることになって、その助っ人に風丸さんが入ることになったって・・・
あの先輩は風丸さんの幼馴染だったそうだ

優しい風丸さんは幼馴染のために助っ人に入った
練習試合が終わったらすぐに戻ってきてくれる
僕はそう思っていた







なのに、風丸さんはいつになっても戻ってきてくれなかった





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