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□だから見つめれない空色・海色
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「・・・風丸」


円堂はオレの腕を引っ張って階段の段差に座らせた
その隣に円堂も座って、オレの背中をポンっと軽く叩いた


「風丸が何を悩んでるかわかんないけど、綱海も俺も他のみんなも!風丸のこと大好きだから」


そう言いながら、オレに笑顔を向けてきた
それがとても眩しくて小さい時からの憧れだった
憎めないこの笑顔がみんなを引きつけるんだ、それはオレも同じだし、あの綱海さんも・・・


「円堂・・・オレ、弱い自分がヤダ。だから、サッカーやったばかりなのにお前たちについていけた綱海さんがうらやましいんだ・・・
 馬鹿みたいだよな。ただの嫉妬なのに、綱海さんを無視したりして・・・女々しいよ」

「風丸は弱くない!!」


円堂はオレの肩を勢いよく掴んできた
驚いてみた円堂の顔は今まで見たことないくらい真剣だった


「弱くないよ・・・」


真剣な顔から今にでも泣きそうな顔になってオレの胸に顔を埋めてきた
掴んでいる手はどこか弱々しい


「風丸、何度も俺のこと助けてくれた。ピンチな時、一番に駆けつけてくれた。崩れそうな俺をいつも支えてくれたじゃん」

「円堂・・・」


円堂はいつもオレを期待してくれた。なのに、オレはその期待に応えることができなかったんだ・・・


「確かに綱海はすげえよ!俺だって何年もサッカーやってるのにあいつのシュートを止めるの大変だもん!俺もあんな綱海がうらやましいよ
 でも、それってあこがれじゃん!妬みでも嫉妬でもない!風丸は女々しくなんかない!」


円堂の言葉にだんだん目頭が熱くなって、今にも涙が零れそうになった
でも、今泣いたらそれこそ弱いところを見せてしまう
オレは涙を必死でこらえた

こらえているのがバレたのか円堂は苦笑いしてオレの頭に掌をかぶせてきた


「ありがと・・・円堂」


たくさんある言葉の中でオレが言えるのはこの一言だけ
無知な自分が憎いけど今の状況にあってる言葉はこれだけだと思うから


円堂に励ましてもらって、自分の気持ちをぶつけたら少し重りが取れたように体が軽くなった気がする
オレが円堂と分かれた後も、円堂はその場に残りながらこちらに手を振っていた
オレもその手に合わせて振り返しながらその場を去って行った










「俺じゃ、風丸を支えきれてなかったんだ。ずっと傍にいたのに、風丸のこと何も分かってなかった・・・ごめんな、風丸」


いつもボロボロになりながら、俺の隣で一緒に戦ってくれた
まとまりのないサッカー部を一つにしてくれた
感謝の言葉をいうのはこちらの筈なのに・・・

自分たちの事ばかりでアイツのことを何も見てなかった、見てるつもりでいた、でも実際は何も見えてなかった
誰よりもお前のことを思ってるつもりだったのに


「力不足で、ごめんな・・・風丸」


きっと、あの海色に染まった奴がお前のことを支えてくれる



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