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□彼が猫になっちゃった!
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まだ眠気が残って瞼がなかなか上がらない頃
オレの頬に何かが触れるのを感じた

最初は寝惚けて気のせいだと思ったけど、やっぱり何かが触れてる
ってか、なんかくすぐったい


「んっ・・・なんだ?」


オレはゆっくり瞼を開ける
いつもと変わらない部屋の天井
とくに変わり映えのないと思われた
だけど、何故だろう
隣から何やら気配を感じる


「(そういえば、昨日は吹雪が隣で寝てたような・・・)」


オレは重い体を起こして隣を見てみた
・・・が


「ふぶき・・・?」


オレの隣には誰も眠っていない
朝方の苦手なオレの全くと言っていいほど働かない頭でどうしたのだろうと考えた結果、先に起きたのだろうという結論に達した
でも、たしか吹雪がオレより早く起きたことなどない

少しずつ覚醒していく頭でそう思い始めた頃だ


「ミー」


どこからか、何かの鳴き声が聞こえてきた
外からではない、すごく自分に近いところから

すると、オレの手になにやらやわらかく温かいものが触れた


「えっ・・・?」


オレの自分の掌に目をやる
そこには・・・


「みゃ〜」

「ね・・・猫っ!?」


靄の掛かっていた脳内が一気に覚醒したのがわかった

そこにいたのは小さな子猫
白色・・・というより銀色の毛並みがすごく綺麗

そんなことより、何故オレの部屋に猫が侵入している!?
窓は確かに閉めてある、一応と言われ扉もちゃんと鍵をかけている
どこからも入れるところなどない
なのになぜ!!?

そうオレが苦悩しているとその猫はオレの膝の上に乗ってきた
オレはそいつを持ち上げる

毛並みも綺麗だけど、目も綺麗な青色


「お前、どこから来た?・・・って猫に聞いても答えないか」

「み〜、み〜〜」


でも、この猫
誰かに似ているような気もするけど・・・

それより、この猫どうしよう・・・
一人でどうにかならないよ


「なんでこういう時に限って、吹雪が居ないんだよ」

「みー、みーー」

「・・・吹雪?」


そうだ、この猫!吹雪に似てるんだ!!


「まさか、吹雪が猫になっちゃったなんてことはないよなw」

「みー!!!」


そう言うと、猫はいきなり暴れ出してオレの手の中からひらりと抜け出した
抜け出したと思ったら、次は吹雪の荷物を漁り始める


「おいっ、駄目だよ!それは吹雪の・・・」


すると、その猫が出してきたのは白いマフラー
吹雪の弟のアツヤのマフラーだ
猫はそれを懸命に叩いている・・・ていうより、何かを伝えようとしている


「・・・もしかして、吹雪?」

「みーー!!」







雷門中の合宿場に一つの悲鳴が響き渡った






「みっみんな!!!」

「あっ、風丸おはよう!今日は遅かったな」

「あっ、円堂おはよう・・・じゃなくて大変なんだ!!」


呑気に挨拶している暇ではない


「吹雪が猫になっちゃった!!!」

「吹雪が〜?」


オレがだっこしてる猫を緑川が覗き込んだ
疑っているような目で猫(吹雪)をなでる


「どっからどう見てもただの猫だけどね〜」

「でも、吹雪朝いなかったし。オレの部屋にこの猫が居たんだぞ!!?」


疑うのも無理はないけど、でも現実なんだ

すると、円堂がオレの肩に手を置く
振り返ればどす黒いオーラを出す円堂の姿が・・・


「なあ、風丸。それって吹雪がお前の部屋で寝てたってことか〜???」

「えっ、円堂さん・・・肩が痛いんですけど・・・」


そんなことをしていると円堂がオレの腕の中の猫の首つまんでぶら下げるような形で持ち上げる


「本当に吹雪?」

「そんな持ち方したら可哀想だろ!!返せよ円堂!!」

「うぅ〜」


円堂につままれている猫が唸り始めた
怒ってるんだろう
猫がその持ち方は大丈夫だとわかっていても、なんか可哀想でオレは必死で止めようとした


「確かに、毛並みとかは吹雪に似ているな」

「豪炎寺っ」

「にゃー!!」


覗き込んだ豪炎寺の顔を猫が思いっきり引っ掻いた


「風丸、この猫はまさしく吹雪だ」

「豪炎寺!血がっ血が出てるって!!」

「吹雪君って豪炎寺くんのこと嫌いだもんね〜」


まるで他人事のようにヒロトが隣で呟いた
円堂に離された猫はオレのもとに再び戻ってきた


「でも、確かにどうしたんだ?いきなり猫になるなんて非現実的だが」

「それ言ったらおしまいだと思うな〜、オレ達って結構非現実的なことやってるし」


鬼道の言葉にまたヒロトが言う
この際現実的だと非現実的など関係ない
吹雪は何故か猫になってしまった、これが現実だ


「どうやったら戻るんだ?」

「どうやったらって・・・」


オレが吹雪の顔を見る
いつもの吹雪じゃないみたいに大人しく、こっちを見つめていた
なんというか・・・


「円堂、飼っちゃ駄目かな///」

「風丸!前も言ったけどウチじゃ猫は飼わないからな!」

「だってこんなに可愛いんだぞ!!」

「そう言っていつもいつもどこからか捨て猫拾ってきて!」


「何この茶番劇」

「円堂と風丸の立場が逆転してる・・・」

「前、風丸に街の案内してもらってる時、なんどかペットショップの前で止まったよ」


だって、小動物可愛いんだもん
ふわふわしてて、温かくて
可愛いのがいけないんだ


「風丸君、確実にあの猫が吹雪君だって忘れてるね・・・」

「ネコと戯れる風丸・・・なんて絵になるんだ///」

「吹雪さんGJ!」


こんな吹雪初めてだ
セクハラもしてこないし、すっごく小さいし


「吹雪可愛い///」


オレが猫をギュ〜っと抱きしめれば猫はオレの顔をなめてきた
正直くすぐったい
我慢できず腕の力を緩めると・・・






チュッVv






ボンッ!!




「えっ!」


猫がオレの唇に・・・キスをした、その瞬間目の前で何かが音をたてて爆発した
腕の中の質量が増す
確実に猫の大きさではない

これは・・・



「「「ふ・・・吹雪!!!!!」」」


オレの目の前には白い子猫の姿はなく代わりに姿を消していたあいつがいた
しかも、オレの唇にはそいつの唇が重なっている


「あはっVvやっと戻れた」

「・・・っぁ///」


オレは皆の眼の前ということで恥ずかしくなりどんどん顔を赤くする


「風丸君に可愛いってもらえるなんて感激だな〜Vvというか、あんなに風丸君が僕のこと抱きしめてくれるなんて〜」

「ふっ吹雪!!何で元に!!?」


放心状態のオレの代わりに鬼道が聞いてくれた


「え〜、そりゃあもちろん。愛しの人の口付けで魔法が解けたんだよ*.+.」


ありえない!!
そんなことで解ける筈ない!!
しかし、現に吹雪は元に戻ったし・・・

小さい子猫の姿はそこにはなかった



それからオレはまた吹雪のセクハラされる日々が始まったのだ・・・









「吹雪・・・」

「どっどうしたの、キャプテン。そんな真っ黒なオーラを出して」

「いや〜、なんで風丸の部屋でお前が一緒に寝てるとか?さっき風丸にキスしてるのとか?色々聞きたいことがあるからさ〜ちょっとサッカーやらない?」

「「「以下同文で吹雪(さん)サッカーやろうぜ」」」



END


このあと吹雪君はサッカーという名のリンチに遭うと思う
風丸さんに至ってはもう部屋に誰も入れなくなったとさ

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