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□どうしよう好きみたい
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いつだったか忘れたけど、佐久間が言っていた

『アイツ』はただのおせっかいな奴
いちいち五月蠅いし、しかもなかなか離してくれないそうだ

初めて帝国と試合をした時には考えられないイメージがオレの頭をよぎる
思い浮かべるだけで自然と笑いがこみあげてくる

最初はその程度の認識だった






今日は帝国との合同練習
鬼道が雷門に転入してきてからこのような時間を設けることが多くなった
何回も行っているうちに佐久間と仲良くなっていった

話があって一緒にいてすごく楽しい
それになんだか、佐久間はほっておけない。
最初はクールでどこか怖いイメージがあったけど一緒にいるとなんだかそのイメージも変わってくる
今では無邪気に鬼道のことを話す佐久間が可愛いなって思う時もある、鬼道が好きなんだなと直感した
同い年なのにまるで弟のようだ

今だって・・・


「そんで、その時の鬼道さんが本当にかっこよくて///」

「アハハ、佐久間の眼には全部かっこよく見えるんだろ?」


休憩の合間、こんな風にまた佐久間が鬼道について語ってくる
鬼道はサッカーがうまい。オレでもかっこいいと思う
ここまで誰かに愛されている鬼道がたまに羨ましくも思う時がある

休憩がそろそろ終わるころだ


「おいっ、佐久間。そろそろ休憩終わるぞ!早くグラウンドに戻れ」


ベンチに座っていたオレ達の頭の上から低く少し厳しい言葉が降ってきた
見上げれば茶髪に顔にはペイントが施されている長身の男、帝国のGKの源田がこちらを見下ろしていた


「ハイハイ、すぐに行くから先に行ってろ」


佐久間はそう言いながら掌をヒラヒラと払った
さすがに、悪い気もしてオレは佐久間の腕を引っ張って立ちあがらせた


「そろそろ、練習に戻るぞ。それにそんなことしたら源田に失礼だろ」

「別にいいんだよ。いつもあんなんだから」


いつも、こうなのかとオレは横目で源田を見た
その言葉は本当のようで源田は気にしていないようにグラウンドの方へ戻っていってる


信頼してるのか、あきらめてるのか


そんなことを思っていると、グラウンドの方から集合の声が掛っている
オレ達は駆け足でグラウンドに戻った

オレは少し源田が苦手だ
なんとなく話しにくい感じがする
そこまで人見知りなわけではない、それでも関わりづらくて少し引き気味になってしまう

佐久間の言っていたアイツとオレの中のアイツではどうしても合致しない




「風丸っ!!」

「えっ?」


近くで佐久間がオレの名前を叫んだ
気づいた時には遅かった

1年生が蹴ったボールが自分の方へ飛んで来ていたらしい
でも、それを知った頃にはオレの頭にボールが直撃していた
いきなりのことで避けることはおろか防ぐこともできなくて、オレはそのまま意識を手放した






「んっ・・・」


目を覚ましたのはそれから少し経った頃だ
夕陽がカーテンの間から差し込んできている
見慣れない白い天井にかけられた布団
自分が保健室にいるんだと気づくのにそこまで時間はかからなかった


「気づいたか」


聞き慣れない低い声がオレの耳に入ってきた
隣には椅子に座り足を組みながらこちらを見ているオレの苦手なあいつが座っていた


「なんで!」

「なんでって、俺がお前を運んだからなぁ」


話ではあれから気を失ったオレを近くにいた源田が保健室まで運んでくれたらしい
その後も、他の奴には練習に戻ってもらってずっとオレの傍にいてくれたそうだ


「・・・ありがとう」

「当然のことをしたまでだ」


そう言って源田は笑いかけてきた
見慣れないその笑顔に何故かオレの心臓が高鳴った気がする
きっと吃驚したんだろう、あいつも笑うんだ・・・と


「お礼をいうのはこちらかもしれない」

「なんで?」

「佐久間のことだ。いつもあいつの傍にいてくれてありがとう」


それこそ当たり前のことなのに・・・


「あいつはあんな性格だから、俺達以外からはあまり言い目で見られないんだ。だけど、お前は違うし、あいつ自身もお前には大分心を開いているようだからな」

「オレだって、アイツと一緒にいてすごく楽しいし・・・みんなが思うよりずっといい奴だよ佐久間は」


そうだなと言っている時のあいつの顔はすごく優しくて今まで見たことなかった
オレの中のあいつのイメージが崩れ落ちた瞬間だった


「そろそろ戻ろう、1年共がお前に謝りたくてうずうずしているだろうしな」

「あぁ」


その間もたわいのない話をしてオレ達はその距離を縮めていった

グラウンドに向かう前の階段
未だに頭が少しボ〜っとしていて、たまに視界がぼやける時があった
それでもオレは隣にいる源田にこれ以上迷惑をかけたくなくて黙っていた

だけど、オレは不注意で階段を踏み外してしまった
落ちる・・・そう思いオレは固く目をつぶる
しかし、痛みはなかなか訪れないし、何故か体が浮かんでいるような感覚がある
オレは恐る恐る目を開くとオレは踏み外した段から少し上の所で浮いていた


「大丈夫か?」


すぐ後ろから源田の声が聞こえた
オレの体は源田のおかげで落ちることはなかった
長い腕がオレの脇を通して支えてくれている

しかし、オレは今の状況からどんどん顔を紅潮させていった
なんたって、今オレは源田に抱きかかえられているような状況で、すぐそばに源田の顔がある


「あっありがと///ごめん、重かったよな・・・」

「大丈夫だ。あまり無理するな、怪我をしてはもともこうもないからな」


そのまま源田をオレを静かに降ろしてその大きな掌でオレの頭をなでた
まるで子供扱いをされているようで気に喰わなかったが、何故かその手に触れていると自然と心が落ち着いた

円堂と同じGKなのに、あいつとは違う
大きな掌も、オレを支えた長い腕も、俺なんかよりずっと大きい体
何もかもが、どこか安心させてくれて

たまに見せるやわらかい顔も、低くて落ち着いた声も、そのぬくもりも



触れたところがどんどん熱くなっていくのがわかった
今、オレは源田の顔を直視できない
きっと顔がありえないほど赤いんだと思う


「いこう、風丸」


戻っていく頃には涙目で1年生が謝罪してきた
オレは大丈夫と言っても、それを止めない

佐久間がオレのもとに駆けてきた


「大丈夫か、風丸?」

「あぁ、心配かけてごめん、もう大丈夫だから」


よかったと、佐久間は胸をなでおろした


「もう、遅い。これで解散にしよう」


鬼道の言葉で片づけをはじめ出したみんな
すると、オレのもとに源田が歩み寄ってきた


「本当に大丈夫なのか?」

「あぁ、大丈夫だから」


それでも、源田はどこか疑っているようにオレを見た
佐久間がおせっかいと言っていたのがわかった気がする

少しすれば、源田は息を吐きその手でオレの横髪をつまむ


「綺麗なんだから、傷だけはつけるなよ」

「なっ///」


からかわれたってわかっているが、その言葉にオレは開けた口が閉じれなくなっていた
源田は悪戯っ子のように笑って鬼道のもとへ向かった

そんなオレの顔を佐久間が覗き込んできた


「風丸?顔、真っ赤だぞ」

「〜〜〜っ///」



あの時、吃驚して心臓が高鳴ったんじゃない
だって・・・今もこんなに心臓が激しくなっているんだから


「佐久間・・・オレ・・・」

「風丸?」








「風丸!」

「鬼道?」

「さっき源田が『お前は軽いからもっと喰え』と言っていたが」

「なっ///『五月蠅いおせっかい』って返しておいてくれ!!!」




END


マイナー上等!
源田はイケメンだし、風丸が愛されてればなんでもOK!!

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