Give&Get

□はじめの第0歩
1ページ/1ページ

*風丸♀




「いい加減告白したらどうなの!?」

「え……」



机をバンと叩いた緑川は俺と真っ直ぐ視線を合わせていた
隣の席の玲名もこちらに目を向け口を開いた


「確かに…見ていてイラッとする」

「…玲名まで」

「だよね、男なんだからさぁ好きなら好きでシャキッと告白してきなよ!!」



なぜ俺はこんなにもお叱りを受けているかというと今、隣のクラスのイケメンくんとお話をしている彼女を目で追っていたことに気づかれたから
彼女というのは俺のってわけじゃなくて風丸ちゃん
凜とした彼女は周りから男女問わず好かれていて始終周りには誰かがいて俺はいつもそんな彼女を目で追うだけだった



「いきなりあんま接点がない俺なんかから告白受けたって困らせちゃうだけだよ」

「わからないよ、ヒロトがあの子を一目惚れしたように向こうもこっちに一目惚れしてるかもー」

「なにその夢物語…」

「ヒロトだって顔はいい方でしょ」

「血色は悪いけどな」

「玲名、そこは触れちゃだめっ!!」

「………」


緑川はいつも調子のいいことばかり言うから緑川の言うことに従うのは危険だ
人間は顔じゃない、中身も大事なんだ…
緑川は俺が風丸ちゃんに一目惚れしたって勘違いしてるみたいだけど違う
たまに目につく彼女の人への接し方とかその仕草とか優しい所とか…眺めている内にいつの間にか心奪われてしまっていたのだ



「とりあえず緑川は特に口挟まないで」

「えー当たって砕けちゃおうよ」

「まだ砕けたくないから」

「つまんないっ」

「誰今つまんないって言ったの」

「玲名w」









*****







「…るちゃん」

「………」

「かぁぜぇまるちゃん!!」

「あ、……ごめん…なんの話だったっけ?」

「上の空だね、悩み事ならいつでも相談に乗るよ?」



吹雪がにこりとはにかんで私を見た
それにつられ口元を緩ませた私は大丈夫と一言告げ話を再開させた



「……ねぇ、風丸ちゃんさぁ」

「…なに?」

「好きな人…いるでしょ」

「え!!」


ぽふっと音と共に急激に顔が熱くなって片手でパタパタとあおぐ
そんな私に意地悪な笑みを浮かべながら吹雪は言葉を続けた


「当ててあげようか?」

「いや、いないからっ」

「このクラスだよねー」

「やっ…吹雪違うっ」



心臓がバクバクと鳴り響く
きっと吹雪にも聞こえている筈
この人は本当に私をおちょくるのが好きみたいだ


「フフ、冗談だよ」

「…え?」

「僕エスパーとか使えないからさぁ実際風丸ちゃんに好きな人がいるか自体わからないよ」



今度は困ったように眉を吊り下げ笑う吹雪
私は一安心して息をついた


好きな人…いるよ…
誰にも打ち明けられない…
私なんかと付き合ったら不似合いになってしまうくらい格好良くて気づかいも上手で優しいヒト……
彼はきっと…幼なじみの玲名の事が好きだからこの思いは溢れないよう封じ込めているんだ



「風丸ちゃん?」

「…え、なに?」

「涙たまってない?」

「っ……そ…そんなことないよ」


慌てて涙を拭き向こうで楽しそうに騒ぐ彼達を尻目に私は吹雪に笑ってみせた



「馬鹿だね」

「ん?」

「……別になんでも」



しかし吹雪は目を伏せ何も言わなくなってしまった
その表情に何を示していたのかわからないまま休み時間は過ぎていってしまった












前進しない恋物語。










END

「ぷち」の美子様にいただきました
ヒロ風♀で両片思いです。二人とも可愛すぎて死ねます
50000Hitおめでとうございます

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ