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□気づくまであと10秒
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なんでかなんて、知らないけどさ

いつからかなんて覚えてないけどさ

本当に無意識に

あいつを目で追っていた




《気づくまであと10秒》




最近イライラすることが増えた
いつもだろ、と言われそうだがこの頃はもっと酷い

理由なんてわかってる、というか絶対そうだ


「かっぜまっるくんVv」

「暑苦しい!!抱きつくな!!!」


絶対こいつらのせいだ

誰がいようとお構いなしにじゃれあってるこいつら(端から見れば一方的にだが)
2番の風丸一朗太と9番の吹雪士朗だ
どっからどう見ても女同士の絡み合いだが、正真正銘の男同士だ
しかも付き合ってる

そんなめんどくさい事は考えねぇけど……正直ウザイ
見せびらかすようにいちゃついてんじゃねぇ!!
風丸の方はそんなこと考えてないだろうけど、吹雪は絶対見せびらかしている
あいつはそういう奴だ

こんなの毎日見せられたら嫌でもストレスが溜まる

俺だけじゃないはずだ
例えば……風丸の幼なじみの円堂とか
一見笑ってるけど、たまに見せる顔を偶然見てしまったときの衝動は忘れない
他にもあいつを好いてるのはたくさんいる
あいつは女顔だがれっきとした男なんだがな


顔が綺麗なのは大変だねぇ、なんて思っていると向こうの方で監督が集合をかけている
他のやつらが走っているなか、俺は歩いてそこまで行った
走っている奴らの中で一番に着いていたのは、真面目でチームで俊足を誇る風丸だ


はっきり言って、俺は風丸が好きじゃねえ
あの真面目ちゃんの性格から俺には合ってない
世界大会に行くまでで何度もいがみ合いをした
あっちだって、俺の事をよく思ってる筈がない
今はだいぶ落ち着いた方だが、そんなに馴れ合うような仲でもない

俺は特定の奴以外は一定の距離を保っている
こいつも、昔も今も、この先もこの一定の距離が続くことだろうと思っていた



俺があることに気づくまでは……



今回の練習は二チームに分かれて試合を想定した練習だ
俺の目の前には鬼道クンが立っている
なるほど、司令塔は分けた…ということか
そして後ろからはうるさいほどに皆にエールを叫んでいる俺達のキャプテン
護りも攻めもできる有能なFWも俺の後ろにいる
その視線は相手チームの一点しか見ていないが

練習くらい集中してできないのかと思う
いつからの付き合いか知らないが、練習の邪魔だけはしないで欲しい


ため息を吐いていると後ろのゴールからの氷のような冷たい視線を一瞬感じ身を震わせた
あの無駄に明るい奴の裏側がどうなっているのか知りたく……ならない、知ってしまったら絶対後悔する


当の本人は鬼道クンと何か話している
おいおい、お前の彼氏の目付きも悪くなっていってるぞ
こいつら絶対真面目に練習をする気ねえだろ
あいつも、これだけの視線になんで気づかないんだよ
どんだけ鈍感なんだか

ここにはまともな奴がいないと思うと頭が痛くなる

まぁ、プレーに支障が出なければそれで良いんだけどな

そう思いながら俺は集中力を高める
だが、いつものように集中できない
今日は調子が悪いようだ、何故か胸のあたりもモヤモヤして気持ち悪い

本当に苛立つ一日だ、とその時の俺は思っていた

そんなことをしていると、グラウンドの外からマネジャーがホイッスルを吹く
それと同時に置かれていたボールが蹴り出された
全員の視線がボールに集まる
その頃には、俺も充分集中できていた
やはりさっきのは気のせいのようだ


いくらテクニックがあるやつらでも、少し頭を使えば簡単にボールをとることなんて出来る
俺はそこら辺の奴等より少しばかり頭の回転がはやいらしい
頭脳戦は鬼道クンと良いとこだな

でも、流石に世界大会に選抜されたメンバーだ
気を抜けばこちらもボールを取られてしまう
周りに意識を集中させながら俺はゴールを目指す

昔よりあいつらも俺のプレーについてこれるようになった
たまにはパスも出す
俺もだいぶ甘くなったと一人で思う

周りを見て、指示を出しながら攻守を切り替える
簡単そうに見えてかなりハードな立場だ
まぁ、その立場が二人いる分まだ楽なのかもしれない

だが、俺も人間。たまにはミスをする


「不動!!」


後ろの方から(一応)チームの奴の声が聞こえた
だが、聞こえた頃にはもう遅くゆっくりと体のバランスを崩す
気が回らなくて一人気づくことができなかった

俺は舌打ちしながらその場に倒れこんだ

まったく、見事なまでにボールを取られてしまった
少し頭がボーっとする、使いすぎたな・・・これは

すると、俺の傍に駆け寄ってくる奴がいた
結構物好きな奴・・・なんて思った、こんな俺の事気を使う奴なんてあのうるさい(一応)キャプテンくらいだと思っていたから

だが、そいつは意外な奴だった


「大丈夫か!不動!!?」

「はっ!?風丸??」


風丸が俺の腕を取って立ちあがらせた
心底心配しているような顔をしているが意味がわからない

俺に向けてスライディングしてきたのがこいつだというのは既に理解している
そこに悩んでいるんじゃねえ


「なんで来たんだよ」

「は?」


俺が呟けば何を言っているのかわからないといったような顔で聞き返された
いや、わけがわからないのは俺の方だ


「お前、俺が昔やったこと覚えてねえ訳じゃねえだろ?そんな俺の所になんでわざわざ来るんだよ」


まだ代表が決まりたての頃
俺は練習中にこいつが怪我するようなプレーをしたことがある
そのことについて反感も喰らった
まぁ、今でも悪かったなんて思ってねぇけど
だが、こいつだって良い風には思ってない筈だ
意味わかんねえ・・・こいつ

しかし、俺の目の前にいるこいつはキョトンとした顔をした後、はぁ・・・とため息をついた
その態度が何気にいらつく


「お前がどう思おうと、オレはお前に悪いことをしたと思ったから謝りにきた。それじゃ駄目なのか?」


今度は俺がキョトンとする番だ
なんだ、こいつはただの


「甘ちゃんだな」

「相変わらず口が減らないやつだな」


俺の言葉に少しはカチンと来たらしい
なんとなくやり返せた気がして満足する


「まあ良いさ、お前がそういうやつだって知ってるし。とりあえず悪かったな、今後からは気をつけるよ」


そう言ってアイツは練習に戻って行った

俺も戻ろうとしてから違和感に気づいた


「・・・ちっ、めんどくせえ」


誰にも聞こえないほどに小さな呟く
俺は違和感に気にも留めずに練習に戻って行った


監督が集合をかければ今日の練習は終了だ
ずいぶんと長く感じた気がする
それにいつもより疲れた気がする、あんな奴のために頭を使ったのがいけなかったか

俺はため息をつきながら自室に戻ろうとした


「不動!」


だが、そうさせてくれないようだ


「なんだよ、風丸クン?まだなんかあるわけ?」


振り向こうとすると、思いっきり腕を掴まれてどこかに引っ張って行かれた
どこかなんて何も言わずにアイツも黙ったまま
俺が後ろをちらりと見た
こちらをいかにも嫌な雰囲気で見つめている吹雪の姿が見えたが、すぐに隠れてしまった


「なんだってんだよ、こんな所にひっぱってきやがって」


俺は最終的に合宿場の裏まで引きずられた
その間、アイツは何一切しゃべらない


「お前が隠したがってるみたいだったから」


何を?なんて聞けなかった、アイツの手の中には湿布とテーピングがしっかりと握られているのだ
あぁ、ばれてたんだ。なんて頭の隅で思う


「オレがスライディングしたときだろ?まだ軽いから今処置すれば明日もいつも通り練習できると思う」


そう言いながら足を出せと促された
俺もしぶしぶながら足を出せば、風丸が丁寧にテーピングし始めた
慣れた手つきで器用に進めていくのを俺は黙って見ていた


「ほらっ、できたぞ」


見事に巻かれた足を見る
本当に慣れたものだと思う


「上手いんだな」

「もと陸上部だったし、それにここって慌ただしい奴らばかりだろ」


そう言って苦笑するこいつが本当に甘い奴だとよくわかった
なるほど、母親と呼ばれるわけだ


「お人よし」

「良くいわれる」


すると、風丸がオレの隣に腰を下ろす
こいつってやっぱりわからねえ


「お前ってさ、俺のこと嫌いなんじゃねえの?」

「はぁ?なんで」

「はっ!?」


まったくわかっていないような顔で風丸が首をかしげる


「なんでって!お前、俺に何度も怒ってたし、お前だって俺の事気に喰わなかっただろ」

「まあ、そりゃあ。だって、お前が自分勝手なプレーやってると思ったから。だけど、全部考えてやってることだってわかったから」


すると、風丸が俺の顔を覗き込んできた
急に縮まった距離に息が詰まる
こんなに近くで見たことはなかったと思う
こいつって結構綺麗な顔してるんだな・・・なんて、何故か冷静な頭の隅で考えていた


「今では、お前だって欠かせない仲間なんだ。嫌いなわけないだろ」


そう言ってにっこりと笑った
それを見た瞬間、顔に熱が集まるのがわかった


「なっ、なんで俺が足ひねったってわかったんだ」


少し声が動揺している、自分でもわかってしまうくらいに、ダサッ・・・


「なんとなく!隠してるみたいだからどうしようか悩んだけどな。・・・無理、するなよ?」


鈍い奴だと思ったら、意外に鋭いんだな
だが、そんな心配しているように言われたら


「・・・わかった」


俺のキャラじゃない・・・だが、こいつには何故か逆らえない気がする
なんとなくだけど・・・こいつが心配するような顔をさせたくなかった
なんでかなんてわかんねえ


「そっか!!!」


そう言って、風丸はその場に立ち上がる
その際に振りかえって


「オレ、不動の事、嫌いじゃないから」


そう満面の笑みを浮かべてアイツは言った



ドクッ

10



吹雪の顔を見た瞬間・・・優越感に満たされた







アイツが笑うと、もやもやが取れた





そうか・・・オレ









アイツの事が・・・





END

ようやく完成しました吹風←不!!!
だが、吹雪の出番がなさすぎる!!!不動が女々しい!!申しわけない!!!
こんな駄作ですがもらってやってください
リクエストありがとうございました

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