Give&Get

□吹き抜ける風のように
1ページ/5ページ

あの試合の後、『ごめん』って謝りながら泣いているあいつを強く抱きしめた

そのとき思ったんだ

こんなにこいつは小さかったっけ?って

それからかな

あいつに触れるのが少し怖くなったのは





≪吹き抜ける風のように≫






エイリア学園を倒した円堂達の前に現れたのはかつての仲間たち
ボロボロになりながらも一緒にやってきたやつらが目の前で戦っている

強さを求めて、エイリア石に縋った
円堂のように強くなりたかった

ある少年が言った言葉が今でも頭の中を何度もよぎる
誰よりも仲間のことを思って、誰よりも強さを求めた
隣で笑っているのが当たり前だった、いなくなったら穴が開いてしまったよう

誰にも埋めることのできない穴

少年が・・・風丸がいるべき場所だから


今までだって弱いと思ったことは決して無い

風丸は強い

その気持ちがいつの間にか風丸自身を追い詰めていたなんて円堂は知る由も無かった


でも、気づいてしまった

涙を浮かべながら震える風丸を見て
大きいと思っていた背中が意外にも円堂の腕の中に納まってしまうくらい小さくて


あぁ、風丸はこんなにも脆かったんだって














それから日が経ち、みんなは今までのように生活をしていた
あの一戦が無かったかのように

今日もいつものように部活を終えて皆が帰り支度をしているときだ
グラウンドの方からボールを蹴る音が聞こえてきた











みんなは帰っただろうか
そんな言葉が頭の隅に浮かんだ
額に浮かんだ汗を腕で拭い、足元のボールをゴールに向かって思いっきり蹴る

勢いよく飛んでいくボールを円堂が強くキャッチした
まるで腕がしびれるかのような錯覚を思わせるボール


「良いシュートだぞ!風丸!!もう一本だ!!」


円堂から投げられたボールを胸元で弾ませ足で固定する

この動作をどれだけ続けただろうか
あたりは暗く、学校でつけられている電灯だけが唯一の明かりだった


「ハァハァ・・・円堂、良いのか?」

「何が?」

「何がって、時間だよ!お前の母さん心配してないかって事」


皆が帰り支度をしている中、風丸は一人そのあとも練習し続けた
無人のゴールに向かって何本もシュートを決める

それを続けていたら後ろから声をかけられた

円堂だ

付き合うよと言って、ゴールの前に立った
別にいらないと言ったが
「久しぶりの風丸のシュートを止めたいんだ」
と言って退こうとしなかった

本来、DFである風丸がシュートを打つのは稀である
円堂が最後に受けた風丸のシュートはあの一戦以来

退こうとしない幼馴染にため息を一つこぼしてそいつに向けてシュートを放った





次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ