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□瞳を合わせたその時
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怖くなんかない、辛くなんかない
だってそれはオレがいけなかったから

だけど、ただ


寂しかっただけ




《瞳を合わせたその時》




気づいた頃には一人ぼっちだった
家に帰ってただいまと言っても帰ってくる声がない
そんな生活にも8歳くらいになったら慣れていた

最初は叔父という人が世話をしてくれたし、オレのことも可愛がってくれた
だけどその人もついこの前、何かの病気で他界してしまったのだ
その間に家事やらなんやら教えてもらったから今は一人でも十分生きていける
貯金も何故かたくさんされてた
オレは元から物欲というものがないからお金にも困らない

今思えば、この広い家といい、たくさんの貯金といい
両親のどちらかが金持ちだったんじゃないだろうか


家事ができるようになった
そしてオレにはもう一つ変わったこと


「ニョロゾ、あれ持ってきて」


そう言って当時、まだニックネームを付けていないオレの家族のニョロに持ってきてもらったものを目につける
カラーコンタクトだ

それを付ければ目の色は赤から茶色に変わる
黒髪に茶目ならどこにでもいそうな少年だ

オレがガキの頃
遊び盛りだった年頃のはずなのに、オレは外に出ることが少なかった
理由は簡単、オレが一人ぼっちだから



―お前の目、血の色みたいできもちわり〜

―こっち来るな

―呪われるぞ

―あんな子に近づいちゃダメよ


遠くに聞こえて、でも胸に突き刺さる声
最初は子供の悪ふざけだと思ってたけど、ついには大人達も言い始めた


「呪いなんてあるわけないのに」


そう思って鏡を覗き込む
その暗く鈍く光る赤は確かに血のようだ
あぁ、これだったら呪われていると言われても仕方ない気がしてきた

気持ち悪がられて、オレは引きこもりがちになった
たまに外に出ても向かうのはトキワの森
ポケモン達は、こんなオレでも側に寄ってきてくれた


そして少ししてからオレはよく外に出るようになった
茶色のカラコンをつけ、今まで黒い服ばかり着ていたけど、赤いキャップに赤いジャケット
その名の通り、オレのイメージカラーはいつの間にか赤色になっていた

ポケモン達は大好きだ
だから自然とバトルも強くなって
いつやら一人ぼっちだったオレは皆の中心で笑っている存在になっていた


本当の自分を隠して


そして5年前
グリーンにあったんだ
今までの奴等とは違う
全力でオレにぶつかってきてくれる親友

ブルーにあった
悲しい過去を持ちながら
オレとは違う、過去から逃げずに立ち向かっていた
オレには眩しくて、尊敬できる親友だ


二人に出会わなければ、今のオレはどこにもいない


それはスオウ島の戦いが終わったある日

久しぶりに三人で集まった
オレはジムリーダーの認定試験の為の特訓
グリーンは何かを調べるためにあっちこっちを飛び回ってるみたい
ブルーは今度はジョウトで何かやってるらしい
とにかくそれそれが忙しくて今まで会う予定が合わなかった


「久しぶり、グリーン!!」

「あぁ、特訓の方はどうだ?」

「バッチリ!絶好調だぜ!!」


グリーンの視線がどこか泳いでる
たまに手足を見られてる気がして嫌になったので無理矢理テンションを上げてそんな様子見せないようにした
グリーンも最後にはオレを見て柔らかく笑ってくれた


「そういえば、あの煩い女はまだだな。あいつが呼んだのに」

「ブルーな。確かに遅いな、どうしたんだろう」


そんなことを言っているとオレ達の上に影が被る
雲かなと思ったが目の前のグリーンがやけに嫌なそうなものを見るような目をしている
嫌な気がしてきた
それに気づくのがもう少し早ければよかった


「レッド〜Vv」


空から待ち人が降ってきた
そして背中に重みを感じた
残念ながら当時のオレには踏み止まるほどの力はなくてだな
彼女を背中に乗せたまま地面にひれ伏せた


「グリーンも久しぶりね」

「お前は呑気に挨拶してないで早くレッドから下りろ!!」


その通りだ、できることなら今すぐ退いてほしい
ブルーはとても軽い
しかし人一人分の重さはあるのだ、しかも上から降ってきた
背中というか腰が痛い
ついでに地面にぶつけた顔面も痛い
そして何故か右目も痛い


ブルーはしぶしぶとオレの上から下りてそばにしゃがんでオレを伺っていた
悪いことをした自覚はあるらしい
いってぇ、と体を起こせば目の前に手のひらが現れた


「大丈夫か、レッド?」


グリーンが差し伸べてくれたのだと思い礼を言いながらその手を取って立ち上がった
右目はまだ痛い
不思議に思いながらも顔を上げるとそこには目を見開き驚愕している二人の姿
どうしたのだろう、オレは首をかしげながら尋ねる


「レッド、どうしたの、それ」

「それ?」

「レッド……その目」


そして気づく
さっきなんで右目が痛かったのか

隠してたのに、見られたくなかったのに

この二人だけには、気づかれたくなかった


「あっ……あぁ……っ!!」

「レッド!!?」


オレはいつの間にか駆け出していた
二人が後ろから名前を読んでいるが聞こえないふりをして
赤く染まっているだろう右目を抑えながら

息が上がる頃には周りに誰もいない
空も暗くなっていた
急に怖くなった

またあの頃に戻ってしまったのかと
体力全て削って走った体は力が入らず近場の木にもたれ掛かりながら座り込んだ
足が痺れてもう走れない

これからどうしよう
どんな顔をして二人に会おう
きっと二人とも気持ち悪がるだろう
そうだ、ニョロ以外のポケモン達になんて言えば良いんだ
きっと驚いただろう、トレーナーが隠し事してたから呆れられたかな
自嘲気味に笑ったら寂しさが込み上げてきた


「また一人ぼっちは嫌だな……」

「誰が一人だって?」


返事が来る筈ない
オレは驚いて顔を上げるとそこには息を切らしたグリーンとブルーの姿があった


「この馬鹿……いきなり走り出しやがって」

「逃げなくても良いじゃないの」


なんでここがわかったのかとか
どうして追ってきたとか、聞きたいことはたくさんあった
それを聞く前に右目を抑える


「レッド、右目どうしたの?アタシが飛び付いたりしたから怪我したとか」

「違う!!……違うんだ、これは……」

「レッド、一先ずその手を退けろ」


首を横に振ってみるが、腕を捕まれ簡単に剥がされてしまった
赤い目を見られた
気持ち悪がられる、殴られる、また一人になる


「やだ……やだ!!放せよ!!やだやだやだ!!!気持ち悪いなんて言わないで!!オレを一人にしないで……もう嫌だ!!!」

「レッド!!!」


ふと視界が狭くなった
そして体を包み込まれる感覚
慣れていない感覚に、二人に抱き締められていると気づくのに時間がかかった


「安心して、どんなレッドでも一人になんか絶対しないわ」

「気持ち悪くなんかない、怖がらなくても良い、俺達はここにいる」


二人の言葉の一つ一つが心に染みてくる
視界がぼやけて頬に温かいものが伝うのを感じた
体の力が抜けとも二人はオレを支えてくれた


「逃げてごめん、でも見られたくなかった。小さい頃、この目を見て皆気持ち悪いって言って離れていったから」


二人も離れていくんじゃないかって
そう言うと二人は同時にため息をついてきた
こちらは真剣なのに


「俺達がお前を放すわけないだろ」

「そうよ、見くびらないで頂戴」


その言葉にまた涙腺が緩みそうだ
グリーンが頭を撫でてくれる、それが気持ち良くて擦り寄った

だから、ちゃんと見せて

頬にブルーの掌が触れる、見せても良いのだろうか
オレは迷いながらも左に残ったコンタクトを外す
視線をさ迷わせながらも二人を見つめた
二人も真っ直ぐオレを見つめている

常盤のグリーンと紺碧のブルー

今まで気づかなかった
二人の双眼はその暗闇でも美しく光を放ちその身の名を表していた
いつも二人を見ていたつもりだったのに、実際は自信がなくて視線を伏せていたのだと気づかされた


「綺麗な赤、温かい炎の色。レッドにピッタリね!隠してたなんて勿体ないわ!」


ブルーが微笑んでくれた
オレのこの目を見てだ、気持ち悪いと言わない。むしろ綺麗だと言ってくれた


「放すわけないだろ。俺達がお前に嫌われないようビクビクしていたんだから」

「っそんなこと!」

「だからお互い様ね」


一人ぼっちになんてさせない
もう悲しい思いも、苦しい思いもさせない
だから私達から離れていかないで
私達はレッドの事が大好きだから

語りかけるような言葉がオレを包み込む
あぁ、オレもお前たちが大好きだ


「初めまして、レッド」

「……っ、あぁ!!」


だから、二人に本当の自分を見てほしい
ずっとそばにいてくれる君達と



それからゴールドやシルバー、クリス
ルビーにサファイア、エメラルドにあった
イエローもオレの目を見て驚いてはいたけど優しく微笑んでくれた

オレと同じような、でも異なっている目を持つルビーには


「レッドさんは身も心も、そしてその瞳もbeautifulなんですから、もっと自信を持つべきですよ」


なんて言われた

今でも昔のことを思い出すと、この瞳の色が嫌になる
その分、二人が綺麗だと言ってくれた

あの日、三色の瞳が交わったとき
その日が本当のオレが生まれた日なんだ


「グリーン、ブルー」

「どうした?」

「なぁに、レッド?」


オレはずっと、これからも


「大好きだよ!!」





END

マサラ大好きです
この過去話と長編を含めてサイトの赤先輩の過去にしようと思います
5万打フリリクありがとうございます

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