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□君と一緒にHappyDay
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走って、蹴って、ぶつかって
そんな過労な毎日が続いた

それでも、頑張っていけたのは

あいつらがいたからかもしれない




《君と一緒にHappyDay》




今日は久しぶりの休日だ
日々の練習で疲れきった体をこの日に癒してしまおう

そう思って再び枕に擦り寄る風丸の目を覚まさせたのは、1つのノック音だった

風丸はぼんやりとした頭のまま、重たい体を起こしドアまで歩く
それにしてもうるさい
そんなに鳴らさなくても聞こえているのに、とまだ知らぬ相手に愚痴った


「はいはい誰だよ、こんな朝っぱらから来た奴は」

「風丸君おはよう!!!」

「きゃあ、寝ぼけてる風丸君可愛いVv」


開けたらもっとうるさかった
しかも……


「風丸君朝っぱらって言っても、もう10時だよ」

「そろそろ起きなきゃダメだよ」

「……」


風丸はそのまま静かにドアを閉めた


「いやいやいや、何閉めてるのかな風丸君!!!」

「うるせぇ!!オレには女装趣味の知り合いなんぞいない!!!」

「だからって無言で閉めるのやめて!!!!」


両サイドから引かれるドアはギシギシと悲鳴をあげていた
だが、軍配をあげたのは外側だ
流石に2対1では勝てない

ドアの向こうの二人を再確認する
一見、とても可愛らしい女子だ
ヒラヒラのスカートや、デニムのショートパンツがよく似合う
だが、もう一度言おう

女装だと


「……何やってるんだ、お前ら」

「可愛いでしょ?」


そう言って吹雪が自身が着ているワンピースの端をつまんで見せる
あぁ、確かに似合ってるよ
全く話が噛み合っていないがな

「俺達の結構イケてるよね、吹雪君」

「ねぇ〜」


ヒロトが首を傾げて聞けば吹雪も同じように賛同した
なるほど、この二人は言葉のキャッチボールをする気はないらしい

再びドアを閉めようとしたが、また二人に阻まれた


「あのなぁ、オレは今日という名の貴重な休みを満喫したいんだ。お前らに構ってる暇なんてないんだよ」

「遅くまで寝ているのを満喫しているとは言わないよ」

「そうだよ、円堂君なんてサッカーボールもって早朝に出掛けたよ」

「待て、それは円堂の通常運転だ。ってそうじゃない!!?何故そんな格好をしている!そして何故その格好でオレの部屋まで来たんだ!10字以内で答えろ!!!!」


ノンブレスで言い切ってみせた風丸は息を上げながら二人を睨んだ
二人は互いの顔を見て、その後満面の笑みを浮かべて


「「一緒にデートしようよ(10字)」」


なるほど、こいつらは見事なまでに自分の投げたやり取りでホームランを打ってくれる
キャッチボールに興味はないか、そうかそうか

だが、まだ女装の意味を教えてもらってない


「……オレはしないからな、女装」

「えぇ〜」

「せっかく風丸君に似合う超ミニスカ見つけたのに」


あからさまに残念がる二人
これほど、先に断っておいて良かった思ったことはない、と風丸は脱力感にも似た安堵の息を吐いた


「なぁ〜んてね、別に良いよ。着てくれるなら止めないけど、今日はそれが目的じゃないし」

「は?」

「とにかく着替えて着替えて♪」


そう言われ、風丸は二人に部屋の中に押し戻された

着替えろというのは強制的に出掛けるということか
風丸は溜め息を吐きながら寝間着に使っているジャージのファスナーに手をかける

……が、すぐに手を止めた


「お前らいつまでもそこにいるつもりだ」

「あっ、気にしないで」

「そうそう、僕達ただ見てるだけだから」

「気にするわ!!!」

「あっ、なんならお着替え手伝いましょうk……ぐえっ!」


風丸の拳が見事にヒロトの鳩尾に入る
隣で見ていた吹雪は青ざめながら「基山くーん!!!!」と叫んでいた


「お前らとっとと出ていけ!!!!!!」


そう叫んで、二人をつまみ出した
まったく、油断も隙もない奴等だ
ブツブツと良いながら、風丸はクローゼットを開く
あんまりカッコイイて言えるような服は持ち合わせていないが、恥ずかしくない格好だったら良いだろう
風丸は黒のパーカーを取り出した


着替え終わって部屋から出れば扉の前には二人がニコニコしながら待っていた
「似合ってるね」「かっこいい」と言われ風丸はほんのり頬を染めて照れる

そんなことをしていると二人に腕を捕まれた


「さぁ、デートデートVv」

「ちょっと待て!!お前らその格好のまま行くのか!!」

「えっ?もちろん」


冗談じゃない


「女装趣味の奴等と出掛けるなんてごめんだ!!!」

「大丈夫大丈夫Vvバレないから」


何を根拠に言っているんだぁぁぁ
風丸の叫びも虚しく二人に引っ張られついに街まで来てしまった

しかし不思議だ
本当に誰もこの二人を怪しまない、むしろ頬を赤らめながらヒソヒソと「可愛い」と呟いているやつもいる
一先ず、皆眼科に行けと思う

いや、むしろ自分がおかしいのか
風丸は自分の両手をそれぞれ握っている前の二人に目を向けた

「(女子二人に引っ張られるオレの方がおかしいよな状況的には……まぁ、男子なんだけど)」


回りからは自分はどう映っているのだろうか
変な光景だよな、まぁ現実はもっと変なのだが
本当は女装男子が一人の一般男子を引っ張っている、まったくもって滑稽だ

だが、風丸はまだ気づいていない

周りからは「女子」三人に見えているなんて


「はぁ〜い、到着!!」


そう吹雪が言ったので顔をあげれば、シンプルだが可愛いカフェに着いた
二人に引っ張られて中に入れば直ぐにウェイトレスの女性が迎えた


「いらっしゃいませ、えぇ〜っと女性が三名様ですか?」

「違うよ、オ…私達、彼とデート中なのVv」


風丸が男です、と反論する前に二人が両腕に自らの腕を絡めてにこやかに言った
男一人に女子二人とはどんなデートだ、と思ったがウェイトレスは冗談を言った仲良しの三人ととったらしい
こちらです。と言って笑顔で席まで案内してくれた

風丸が回りの客をみて気づく


「……何か、カップル多くないか?」

「そりゃあそうだよ。カップルしかこの店入れないんだもん」


一瞬時が止まったと思った
耳から入ってきた情報が脳に行き渡ったと同時に風丸は二人の方を振り向く


「オレの聞き間違いか?カップル限定??じゃあ何故オレ達はここにいる?ん?答えろ、早く」

「いやいやいや、風丸君手が痛いよ」


ヒロトの肩を握ったその手からはミシミシと鈍い音が聞こえてくる
顔を真っ青にしているヒロトを余所に吹雪は満面の笑みで


「正しくは男の子と女の子。今日くらい良いじゃないVv気にしない気にしない。だって今日は折角のデートだしね」


そう言って風丸の手を解いて無理やり案内された席に座らされた
あまり騒ぎ過ぎれば注目の的だ、それだけは避けたかったためか風丸も睨みつけながらも大人しく従った
ヒロトに至っては涙目で掴まれた肩を抑えていた


「ここのケーキすごくおいしいんだよ」

「どこの情報だ」

「マネージャー達」

「あぁ、なるほど!」


納得すると風丸は頬杖をつきながらメニューを覗き込む
確かに女の子の好みのようなケーキやらが並んでいる
『女の子好みの』


「風丸君結構ガン見だね」

「なっ///」

「あっ、気にしないで可愛いから」

「うるさい///悪かったなこういうのが好きで///」


指摘されてむきになったのか、そっぽを向いてしまった
そんな様子を二人はニマニマと眺めている
頬の熱はまだ引かない


「で、風丸君はどれにするの?」

「・・・」

「風丸く〜ん?」


二人が風丸の顔を覗き込む


「この苺の・・・///」

「「(何この子、可愛いぃぃぃぃぃ
!!!!!!!!!!)」」


顔を赤らめながら言うそれは二人の少女(男)の胸を完全に打ちぬいたようだ
少ししてから注文の品が届いた
いつもは男らしくして、こういうことは表に出さない風丸だがケーキが目の前に来た瞬間目が輝いているように見えた


「ボク、この光景でお腹いっぱい」

「眼福だね」

「・・・何がだよ」

「いや、こちらの話」


何か疑っているような目でじろじろと見ていた風丸は再びフォークを進める
口に入れる度に頬が緩んでいるのを見るとつい見ている側もつられて緩んでしまう

噂通り、本当においしい店だ
フォークがどんどん進む
気づく頃には風丸の隣には皿が何枚も重ねられていた


「お気に召しましたかお兄さんVv」

「ヒロト気持ち悪い」

「だって、今日はボクらが女の子だからVv」


そういえば、そうだ
何故今回に限って彼ら(今は彼女らだが)がここまでしているのだろう
いつもだったら自分に無理やりにでも女装されているのに(まぁ、全力で殴り飛ばすが)


「頑張ってる風丸君にご褒美かなVv」

「いつも大変でしょ?だから今回は俺達ががんばろうかなって」


それを聞いて風丸は目を丸くした

――オレのため?

自分のために女装までしてくれているのだろうか
こんな店を教えてもらったのだろうか


・・・いや、絶対自分たちの趣味だ、そうにきまってる
でも、もし本当にオレのためだとしたら・・・


「「お気に召しましたか、お姫様Vv」」

「・・・まぁまぁかな///」





てか、お前らが女役だろ

気持ちはいつでも君の王子様だよ

さぁ、明日もまた楽しくなりそうだね



なるほど、明日からまた嵐のような日が来るのか・・・
だけど、なんだかまた明日からの日々を期待している自分がいる

いつも大変で、疲れて、振りまわされてるけど
今日みたいな・・・やっぱり嵐のような休みの日も良いかもしれない

何が言いたいかって?

こいつらといれば、いつでも楽しいってことだよ




頬の熱はまだ冷めない



END

30000フリリクの吹+ヒロ→風です
結局よくわからないものになってしまった
遅くなって申し訳ありませんでした
ひづき様に捧げます

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