Give&Get

□どこから見ても幸福者
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最初は自分達が

そしてそれは周りに影響されて

いつの間にか皆が幸福者になっている



《どこから見ても幸福者》



あれは今より少し小さかった時
と言っても4、5年前の話

頭を撫でられる感触にグリーンは重たい目蓋をゆっくり開く
まだ起きたことに気づかないのか赤い綺麗な瞳は自分に焦点が合うことはない


「……レッド?」

「あっ、グリーンおはよ!!」


ふにゃりと少し眠そうな笑顔を向けてきたレッドの手を握り返す
それにしても毎度ながら起床が早いものだ
グリーンがなかなか起きないだけかもしれないが、彼女は毎度早い
健康的で良いことだ、と握っている手を自身の頬に擦り寄せる


「どうしたのグリーン、寝ぼけてる?」

「綺麗な手だな」


人一倍アクティブに活動しているレッドだが、その手はスラリとした指に色白で女の子の手をしていた
触り心地も良くサラサラとした肌に触れるのがグリーンにとって至福のときだった
その子供のような仕草にクスリと笑って空いている手で茶色い髪を撫でる

すると階段の下から聞き慣れた声が聞こえてきた


「レッドちゃーん、グリーン起きたかしらー?」

「あっ!はぁーい!」


それはグリーンの姉のナナミの声で、姉の声を聞き少し寝ぼけていた頭が少し冴えた
そしていつの間にか膝の上に乗せているレッドの顔を覗き込む


「そう言えば、何でお前が俺の部屋にいるんだ」

「今更!?どっかのお寝坊さんを起こしてきてってナナミさんに言われたんだよー」


あぁなるほどと納得した
別に自分の部屋に勝手に侵入すること自体は咎めない
それに勝手に入ってきていたことはこれが最初ではない、今日はちゃんとした理由があったらしいが


「ナナミさん帰ってきたんだね、来てみてびっくりしちゃった」


いなかったら完全に不法侵入だ
きっと偶然出くわして用を頼んだのだろう

下から再びナナミが呼び掛けてきて返事をする
微かに良い臭いがする、きっとナナミが朝食を作ってくれたのだろう


「食べていくだろ?」


尋ねれば、良いの!と目を輝かせて聞いてきたので当たり前だと返した
いつもはレッドが作ってくれるのだが、こんな日はナナミの料理を食べてもらいたい
嬉しそうに笑うレッドにこちらも暖かくなった気がしてその頭をクシャリと撫でる

その後着替えようとワイシャツに手をかける
すると「なっ」という声が聞こえたので振り返ってみたら顔を真っ赤にさせながら震えているレッドがいた
どうしたと聞こうとしたら被っていた帽子をグリーンに投げつけ


「着替えるなら先に言えよ!!!馬鹿グリーン!」


と叫んで慌てて部屋から出ていき下の階に降りていった
嵐が去ったような静かな部屋で呆然と立ち尽くし、先ほどの彼女の赤い顔を思い出しついニヤけてしまったのはグリーンしか知らない

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